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2007年10月23日(火) 00時22分

在外者除外、違法確定へ 被爆者救済で最高裁判決朝日新聞

 戦時中に広島で被爆した韓国人の元徴用工40人が国や三菱重工業に損害賠償などを求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(涌井紀夫裁判長)は22日、結論を見直す際に必要な弁論を開かないまま判決の期日を11月1日に指定した。これにより、被爆者援護法に関する旧厚生省の通達を違法と認めて総額4800万円の支払いを国に命じた二審・広島高裁判決が維持される見通しとなった。

 問題となっていたのは「被爆者が国内で健康管理手当の受給資格を得ても海外に移った場合には支払わない」とした74年の旧厚生省通達(402号通達)。通達自体は03年に廃止され、現在は在外被爆者に対しても同法に基づいて健康管理手当が支給されている。二審判決は通達を違法として国家賠償を認めた初めての司法判断で、最高裁で改めて国の誤りが確認される形になる。

 元徴用工らは45年8月に被爆したが、戦後は帰国し、長年にわたって被爆者援護を受けられなかった。

 二審判決は旧厚生省の通達について「在外被爆者への援護法の適用を否定するもので、法律を忠実に解釈すべき職務上の基本的な義務に違反した」と述べ、国側には少なくとも過失があったと認定。救済の機会を奪われた精神的損害への慰謝料などとして1人あたり120万円の賠償を国に命じた。

 さらに「来日しない限り被爆者健康手帳を交付せず、健康管理手当を支給しないのは不合理な差別で違法だ」とも指摘したが、この点を理由にした賠償は認めなかった。

 74年の通達をめぐっては、時効を援用して健康管理手当の支払いを拒んだ自治体を相手に在外被爆者が支払いを求めた訴訟も別に起こされた。第三小法廷が2月、「通達は違法で、それに従った時効の援用は許されない」と判断。厚労省は未払い分を早く支払うよう全国の自治体に通達を出している。

http://www.asahi.com/national/update/1023/TKY200710220366.html