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2007年10月22日(月) 06時03分

紀元会暴行、開祖の娘が指示か 教団は幹部主導を否定朝日新聞

 信者の女性を集団暴行で死なせたなどとして、宗教法人「紀元会」の女性信者21人と被害者家族4人が逮捕された事件で、長野県警は暴行は教団「開祖」の娘、窪田康子容疑者(49)=傷害致死容疑で逮捕=の主導だったとの見方を強めている。一方で、教団は21日に記者会見し、幹部の主導を否定した。強制捜査から1週間。閉鎖空間で何があったのか——。

宗教法人「紀元会」本部の大和神社

家宅捜索を受けた宗教法人「紀元会」の本部=長野県小諸市で、本社ヘリから

 信者らによると、窪田容疑者は、教団の現総裁の姉。「大神様」と呼ばれた創始者が死去した02年以降、後を継いだ現総裁の妹に代わって「実権」を握ったという。

 「意思を押し通して従わせるタイプ」(信者)。その発言力が高まるのに合わせるかのように、教団が姿を変えていったとみる信者は少なくない。

 大がかりだった夏祭りは規模が縮小。周囲の住民との接触が減り、孤立化を深めたとされる。1000人いたとされる信者も約500人に減った。

 一方、妹は生まれた時から「御代次様」と呼ばれていた。3階建ての洋館に暮らし、運転手付きの車に、護衛まで付け、「お姫様のようだった」と近所の主婦は言う。

 巨大な白い鳥居の下に石畳が続く。集団暴行があったのは、その数十メートル先の白い建物にある教団本部の大会議室だった。

 建物の中では、日頃の生活を反省して、教団幹部の助言を受ける「勉強会」が朝から開かれていた。この日も信者約80人が参加したという。

 年配の女性もその一人。帰りそびれるうち、部屋の一角で、大勢が誰かを取り囲むようにして大声を上げているのに気づいたという。

 「何か怖いことが起きている」。女性は、人だかりが解けないうちに部屋を後にした。強制捜査に関する報道で、事態の詳細を知ったという。

 30年以上前から信仰する夫婦は「暴力ざたは、今まで教団から教わったこととは全く逆だ」と憤る。3年前に参加した勉強会で、若い教団幹部が他人をけなしていた。以来、会合に参加するのをやめたという。

 紀元会の創設は、法人登記などによると70年。神道と仏教の考え方を採り入れたような教えを説く。関係者の話では、その前に移り住んだ創始者が、人々の相談事に乗るうちに信者が増えた。周辺の土地を買って、施設を次々と建てた。「万病に効く」という「紀元水」を信者に頒布した。

 〈常に神と共に在り神意を受けて正しく行動する栄光の会〉。教団が発行した「紀元会20年の歩み」はこう説明し、創始者夫妻が首相経験者と並ぶ写真などを掲載している。教団の隆盛を誇る内容だ。

 バブル期には信者から多額の金が納められた。ある教団関係者は分厚いのし袋に、ひもで結った現金の束を覚えている。自家用ヘリコプターで来る信者もいたという。

    ◇

 教団はこの日の会見で「一部の会員が起こした不祥事で世間の皆様や関係者にご迷惑をかけ、申し訳ない」と謝罪。暴行の経緯については「被害女性の家族がけんかを始め、ほかの会員が加わった」と教団ぐるみの暴行を否定した。

http://www.asahi.com/national/update/1021/TKY200710210186.html