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2007年10月21日(日) 00時00分

【子どもとネット・3】詐欺対策「お金のしつけ」読売新聞

「お金とのつきあい方がわからないと、ネット詐欺にも引っかかりやすい」と呼びかける吉田さん(10日、盛岡工業高校で)
 「チケットが送られてこないんですが……」

 今年夏、盛岡市の消費生活センターに、高校1年の女子生徒から電話がかかってきた。

 大好きなアーティストのコンサートチケット3枚をネットオークションで見つけ、2万円を指定された口座に振り込んだ。しかし、いつまでたってもチケットが届かない。サイトに書かれていた携帯電話番号はつながらず、センターに泣きついたのだという。

 同センターの吉田直美主査は「親に言えず、センターに相談してくる子どもは多い。でも、連絡先がこれほどあやふやでは、手の打ちようがない」と嘆く。

 同センターに10代の若者から寄せられた相談は、2000年度までは1けたにとどまっていた。ところが、携帯電話のインターネット接続サービスが普及し始めた01年度から増加し始め、04年度には309件のピークに。身に覚えのない料金支払いを求められる「架空請求」などが認識されるようになって、相談は減少してきたものの、ネット通販を中心に、06年度も97件が寄せられた。

 トラブルの原因となっているのが、子どもたちの知識のなさ。連絡先も明記されていないような、怪しげな業者でも不用意に現金を振り込んでしまう。急に気が変わっても、ネット通販はクーリングオフ制度が適用されない。「顔の見えない人と取引をする怖さを子どもたちはわかっていない。相手が暴力団関係者だったらどうしますか」と吉田主査は強調する。

 被害を防ぐ方法として、重視されてきたのが「消費者教育」だ。お金の意味や契約の重要性などを、子どもたちに教える。

 親子向けに金銭教育を行う「マネーじゅく@岩手」を開いている、県金融広報アドバイザーの戸田節子さん(45)(盛岡市)は9月、誕生日を迎えた小学3年の長男(9)がほしがっていたゲームを、一緒にネットで買うことにした。〈1〉先にお金を振り込むと、商品が送られてこない可能性がある〈2〉安いように見えても、送料や手数料などを含めると費用がかさむ場合がある——といったことを説明すると、最終的に長男は中古品を買うことにしたという。

 「ネットを使わせなければ失敗はないが、どうすればうまく使いこなせるのか考えさせる“お金のしつけ”が大事」と戸田さんは話す。

 消費者教育は、同センターでも力を入れ始めている。吉田主査は「携帯電話は危険な道具でもある。場合によっては、闇の世界ともつながり、恐ろしい結果をもたらしかねない。親が子どもに与えるときには、怖いものを持たせるのだと認識してほしい」と話す。

〈クーリングオフ制度〉 一定期間内なら結んだ契約を解除できる制度。訪問販売など不意打ちの取引が対象で、じっくり考える時間があるとされるネット通販には適用されない。

【教育ルネサンス 盛岡フォーラム】

 読売新聞東京本社は30日午後0時55分から、盛岡市盛岡駅西通の盛岡市民文化ホールで、「教育ルネサンス盛岡フォーラム」を開催します。テーマは「ネット、ケータイから子どもを守る」。早稲田大子どもメディア研究所客員研究員の戸塚滝登さんによる基調講演のほか、パネルディスカッションを行います。

 聴講無料。希望者は郵便番号、住所、氏名、年齢、職業、電話番号、希望人数をお知らせ下さい。折り返し入場整理券を郵送します。あて先は〒020・0015盛岡市本町通2の3の2、読売新聞盛岡支局。電話(019・653・1441)、ファクス(019・624・5410)、メール(morioka@yomiuri.com)でも受け付けています。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/iwate/news001.htm