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2007年10月20日(土) 03時07分

<暴力団追放>リーダー刺傷事件後、県警が注意呼び掛けず毎日新聞

 鹿児島市中心部で19日、暴力団追放運動のリーダーが刺されけがを負った事件で、容疑者が逃走中にもかかわらず、鹿児島県警が付近の小学校や市教委に注意を呼び掛けていなかったことが分かった。近くの市立山下小の校長が知ったのは発生から約4時間たった午前11時半。ラジオを聞いた教職員からの連絡で、県警は「報道機関に広報することで補えると思った」と釈明するが、小学校や市教委からは「すぐ連絡してほしかった」と不満の声が上がっている。

 事件が起きた鹿児島市西千石町の現場は、約300メートル北東にある山下小の通学路の一部。午前7時半ごろ、自宅からごみ出しに出てきた暴力団追放運動団体「山下校区安心安全まちづくり推進連絡協議会」会長で、会社役員の妹尾(せお)博隆さん(65)が、前から来た男に、左の尻を刃物のようなもので刺された。妹尾さんは全治2週間のけがを負い、男は徒歩で山下小方向に逃走したという。

 山下小はこの日、全校遠足。4〜6年生は午前6時半に徒歩で、1〜3年は7時半までに学校に集合して8時半にバスで同校を出発した。吉留孝信校長(58)は「児童の登校後は校内の門をすべて閉めるなどの対応をしているが、安全確保のため、速やかに連絡してもらいたかった」と話す。

 市教委と県警によると、学校近くで重大事件が発生した場合、県警から市教委に連絡することを申し合わせているが「今回はなかった」(市教委)という。市教委職員がインターネットで事件を知り、学校と連絡を取ったのは正午過ぎ。学校への連絡を担当する市保健体育課は「今回のような重大事件では、県警から連絡が欲しかった」と話した。

 鹿児島中央署の宝田邦典副署長は「不特定多数を狙った犯行というよりも、リーダーを狙った事件の可能性が高いと判断し、運動団体役員への連絡だけで十分と判断した」と言う。

 一方で同署は、連絡協議会が今月9日に暴力追放決起大会を開いた後、妹尾さんに非常通報装置を持たせたり、妹尾さんの自宅や組事務所周辺のパトロール回数を増やすなど警戒を強化していたが、そうした重点警戒の間隙を突く形で事件が起きる形になった。暴追運動に対する報復と、通り魔の両面で捜査している。【福岡静哉、川島紘一】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071020-00000028-mai-soci