記事登録
2007年10月20日(土) 00時00分

発信源巧妙に隠す読売新聞

ネットで違法販売

「ID盗」事件で押収されたパソコンや周辺機器(県警提供)
  隣の部屋の電波を拝借したり、使用者が特定しづらいデータ通信カードを使ったり——。県警が今月、検挙につなげた児童ポルノDVDやネットオークションのID・パスワードの不正販売事件で、捜査の網をすり抜けようとするネット犯罪の手口が明るみに出た。容疑者たちは発信源を特定されないよう、あの手この手で自分の存在を消し、違法な販売を繰り返していたとみられている。

 今月4日、児童ポルノDVDを販売目的で所持していた疑いで逮捕された4人組の男は、三重の予防線を張っていた。まず販売の窓口になるホームページを米国のサーバーに開設。サウジアラビアのサーバーを経由させて発信源を混乱させ、ネット接続には隣の部屋の住人らが利用する無線LANの電波を拾って使っていた。捜査員が現場に踏み込むと、男の1人はあぜんとした表情を浮かべ、後に「居場所を割り出されるとは思わなかった」と供述したという。

 ネットオークションで使うIDとパスワードを盗んで売ったとして逮捕された福岡県の男(38)は、発信源が割れないよう、ネット接続にプリペイド式のデータ通信カードを使っていた。パソコンに差し込むだけでネットに接続できるこのカードは購入時に本人確認が必要なく、使用者が特定しづらい。

 「通信カードが使用され、被疑者の特定に至らなかった事案が多数発生している」。警察庁の要請を受け、販売元の東京都内の通信会社は6月から、先に携帯電話で専用番号に電話してカード番号を入力しないと、ネット接続できない製品を出荷し始めた。だが男は対策に乗り出す前の昨年2月〜8月、カードを使ってネットに接続し、4000ものIDとパスワードを盗み、約1000万円を売り上げていた。

 これらの事件では、自宅の電波を勝手に使われたり、自分のIDとパスワードが盗まれてネットオークションに架空出品されたりと、利用者が知らない間に被害者になるケースが多い。捜査員は「発信元をたどると行き着くのはそうした『被害者』。多くは被害に遭っている自覚がない」と話す。県警は「固有のパスワードを設定して自分の無線LANに割り込めないようにする」「IDとパスワードを安易に打ち込まない」などの自衛策を訴えている。

 警察庁によると、全国のサイバー犯罪の相談受理件数は2007年上半期(1〜6月)、前年同期比で約2500件増え、約3万3000件に達した。県警への相談件数も年間900件を超え、減る気配はない。

 あの手この手でネット上の足跡を消す犯罪者に、捜査幹部は「通信技術の進歩は速いが、もっと予測できないのはそれを使う犯人の行動。最新技術への対応を強化しつつ、人への捜査にも磨きをかけなければ」と話している。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/ibaraki/news001.htm