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2007年10月20日(土) 08時03分

赤福「まき直し」システム化 関係者が証言東京新聞

 「作りたてを売る」との看板の陰で行われた売れ残り商品の再出荷−。和菓子の老舗・赤福(三重県伊勢市)の偽装販売問題で、浜田典保社長(45)は18日深夜の緊急会見で「配送員の“もったいない”という思いだったのではないか」と組織ぐるみの関与を否定したが、関係者は少なくとも10年以上前から、流通体制に組み込まれていた実態を証言する。

◆仲間で速さを競い合い

 製造日の押印を変えるために包装し直す「まき直し」は、社内の隠語でCOP(シー・オー・ピー=チェンジング・オブ・ペーパー)と呼ばれた。「慣れた人はびりびりに破らず、一度にはがせる。仲間でCOPの速さを競い合ったりもした」と元従業員は話す。

 まき直しは、本社工場では2階で、直販店では人目につかない店舗奥の部屋で、従業員が当日製品の製造前や閉店後の残業時間に行われたという。包装を裏面ののり付けから破いてはぎ、製造日・消費期限とも一日更新された包装を機械か手作業でくるみ直した。

◆新鮮さ見分ける解説書

 「入社時に餅(もち)の新鮮さを見分ける記号を解説したプリントが配られた」。別の元従業員の言葉は、まき直しが組織的なシステムだったことをうかがわせる。

 各店への納入箱数は天気予報、イベント予定、団体客の有無で前日までに練られ、その日作る箱数が決まる。当日も売れ行きを1時間ごとに報告。店によっては積まれた箱の映像を本社のモニターに送るカメラもあり、本社側はほぼリアルタイムで売れ行きを把握、補充の商品が届けられた。

 夕方、閉店が早い店の売れ残りを配送車が回収し、高速道路や駅の売店など帰途の観光客が多い売り場に集約。それでも残ると、夜のうちか翌朝に回収してまき直し、午前中、客が多い店で先に売った。それでも2日売れ残る商品もあり、それは焼却処分されたという。

 「委託販売の店に聞かれても、前日の残りの存在は否定するよう指示されていた。まき直しが多い午前中に買う客は、気の毒だと感じていた」

 別の元従業員は「即日即売といいつつ、今考えると許されない行為だった。でも『きのうの餅です』なんて言えるわけがない」と語った。

◆立ち入り検査、未明まで続く

 19日午前から始まった赤福の本社工場(三重県伊勢市)や名古屋営業所(名古屋市中川区)への農林水産省東海農政局や三重県などの立ち入り検査は、20日未明まで続いた。

 食品衛生法などに基づく検査は、本社工場で19日午前10時前に始まり、約14時間後の20日午前零時20分ごろに終了した。事務所から出てきた職員6、7人が車2台に乗り込み、報道陣のフラッシュを受けながら走り去った。

 職員5人が立ち入った名古屋営業所でも同時刻まで続いた。同営業所の関係者は、検査については触れず「消費者の方に迷惑をかけて申し訳ない」と言葉少なく話した。

(中日新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007102090074548.html