記事登録
2007年10月20日(土) 11時00分

赤福:県が営業禁止 広がる不信 土産店「不正寂しい」 /三重毎日新聞

 ◇観光・経済への影響懸念
 「赤福ショック」広がる——。伊勢市の和菓子メーカー、赤福の消費期限偽装問題で、新たに売れ残り商品まで「まき直し」て出荷していたことで、県は赤福を営業禁止処分とし、工場に立ち入り調査に入るなどあわただしい展開となった。観光・経済に与える影響も懸念され、老舗への信頼を裏切る一連の行為は大きな波紋を広げている。【橋本明、大原隆、加藤新市、山口知、高木香奈】
 ■おかげ横丁で
 赤福本店近くでは今回の問題を残念がる声が聞かれた。
 旅行中の東京都武蔵野市の無職、松原淳さん(76)は休業中の赤福本店の前で「家族みんなが大好きでお土産にしようと思ったのに残念。昔は出張の帰りに名古屋でよく買っていたが、こんな不正が行われているとは夢にも思わなかった。赤福は優良企業という印象があったが、食の安全を脅かす事件が次々と起きている中で『お前もか』という感じだ」と残念そうに話していた。
 同店の近くにある土産店の店舗担当者の男性(43)は「今のところ人通りや売り上げなどに影響はないが、伊勢を代表する会社の不正はとても寂しい。食の安全についての消費者の信頼が揺らいでいる中、自分たちのスタイルで頑張っていくしかない」と語った。
 ■立ち入り調査
 伊勢市朝熊町の赤福本社工場には午前9時55分ごろ、立ち入り調査に入ると思われる約10人が乗ったライトバン3台が到着した。正門ゲートが開けられ、奥の駐車場に消えた。
 工場に隣接する本社は、すべての窓にブラインドが下ろされ、静まりかえったままで、内部の状態はうかがえず、周囲には大勢の報道陣が詰めかけ騒然となった。
 店頭から回収した赤福餅から分離した「むきあん」を購入していた同市小俣町相合の「和菓子の万寿や」には正午ごろ、県伊勢保健所、東海農政局などの職員約10人が立ち入り調査に入った。調査は本社事務所と工場で行われ、夜まで続いた。
 同社は、ガードマンが報道関係者を敷地内に一切入れない厳戒態勢をしいた。また広報担当者が「事実関係が分からないので今は何も話せない」と繰り返すなど、終始張り詰めたムードだった。
 ■他山の石
 他山の石として、急きょ朝礼を開いて食の安全を強調した会社もある。伊勢市の食品加工販売会社では、社長(58)が「大変なことになった」と事態を説明した後、約30人の従業員を前に、「生産工程から出るロスをなくしたいとの思いは経営者としてある。しかし、需要と供給のバランスはぴったりとはいかない。もったいないと(社員から)指摘されたこともあったが、うちは残った物を思い切って処理してきたことが今に生きている」と説明。「もったいないの感覚と、安全を届けることは次元が異なる。消費者は安心安全を最優先に求めていることを再認識してほしい」と話した。
 ■市長は「遺憾」
 森下隆生・伊勢市長は「赤福の食品衛生法に基づく営業禁止処分という報道に接し、大変遺憾なことと受け止めています」とのコメントを出した。
〔三重版〕

10月20日朝刊

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071020-00000001-mailo-l24