記事登録
2007年10月18日(木) 15時32分

食品表示の告発急増「赤福」も明るみに…特別Gメン配置へ読売新聞

 農林水産省の「食品表示110番」に寄せられる内部告発などの情報提供が急増している。

 北海道苫小牧市の「ミートホープ」による食肉偽装が発覚した6月以降の伸びが大きく、6〜9月の4か月間は計1241件と前年同期の2・7倍に達した。このうちの1件は和菓子メーカー「赤福」の製造日偽装を突き止めるきっかけになった。同省は、食の安全・安心に対する意識の高まりにこたえるため、来年度から東京、大阪の両農政事務所に食品表示の「特別Gメン」を5人ずつ配置するなど監視を強める方針だ。

 「赤福が看板商品の製造日を改ざんしている」。8月中旬、東海農政局(名古屋市)の専用電話にかけてきた情報提供者はそう告げた。同農政局が下調べをした上で、三重県伊勢市の赤福本社などへの立ち入り調査に踏み切ったのは9月19日。この日の立ち入りは翌日未明まで続いた。

 同社幹部らへの聞き取りも行った結果、同社は主力商品の赤福餅(もち)について「製造したその日限りの販売」とうたいながら、2割近くは冷凍保存し、後日、包装し直して出荷してきた実態が明らかになった。

 同省によると、食品表示110番への情報提供数(質問を除く)は、5月までは毎月100件前後で推移していたが、6月は252件に急増。7月も371件、8月285件、9月333件と高水準が続いている。内容は、外国産を国産と偽るなどの産地偽装に関する情報提供が最も多く、ほかに「ブレンド米なのに一つの銘柄であるかのように記している」「賞味期限を延ばしている」といった情報も目立つという。

 同省には現在、食品表示について調べる「Gメン」が中央と地方に計約2000人いる。情報提供があると、店頭で商品を買い、DNA鑑定をするなどして事実関係を調べる。偽装の疑いが強まれば、会社に出向いて事情を聞いたり、伝票を確認したりする。偽装が判明すると、日本農林規格(JAS)法に基づいて改善指示や業者名の公表などに踏み切るが、最近は情報提供の急増で「手いっぱいの状態」。担当以外の職員も手伝っているという。

 情報提供者の中には、専門用語を駆使して偽装を詳しく語る人もおり、農水省表示・規格課では「匿名が多いため詳細は不明だが、内部関係者からの通報は確かに増えている」とし、背景について「ミートホープ問題を機に『社内の常識が社会的に通用しない』と気付いた社員が増えたのではないか」と分析する。

 来年度から登場する特別Gメンの正式名は「特別調査官」で、大規模事案に専従する。さらに、本省に「表示企画官」を1人、全国7か所の地方農政局に「統括指導官」を1人ずつ配置し、調査を効率化する。

 消費科学連合会の大木美智子会長は「偽装表示は表示を信頼する消費者に対する重大な裏切りだ。Gメンの調査費を会社に負担させるなど、違反者への措置を強化して業者に緊張感を持たせることも必要だ」と注文している。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071018i3w7.htm