記事登録
2007年10月17日(水) 08時34分

「紀元会」集団リンチ 女性会員証言「怖くて止められず」読売新聞

人の輪、どなり声…

長野地検に身柄を送られる窪田康子容疑者(16日午後1時20分、軽井沢署で)
 小諸市の宗教法人「紀元会」の会員で、すし店経営奥野元子さん(当時63歳)が集団リンチを受けて死亡した事件で、暴行現場に事件当日、居合わせた50歳代の女性会員が16日、読売新聞の取材に初めて応じた。女性会員たちが、倒れ込んだ元子さんを囲み、けったり、小突いたりしていた様子を告白し、「止めに入れば良かったが、怖くて下がってしまった。悔やんでいる」と涙を流した。

 読売新聞に証言した女性は、同会で長年の会員。暴行が行われた9月24日も日中から同会に来ていた。他の会員たちと夕食を取った後、時間ははっきり覚えてないが、「集まって下さい」との声で、ふだんは会員の話し合いや講義に使われる大和紀元会館の大会議室に行くと、すでに数十人の会員が集まっていた。

 最初、部屋の隅にいたが、奥の方で誰かを囲む人の輪がいつの間にかできているのに気付いた。大きなどなり声が聞こえ、様子を見に輪の中に入った知人が戻らないため、女性も見に行くと、顔見知りの奥野さんが横たわり、会員たちに囲まれ、殴られたり、けられたり、小突かれたりの暴行を受けていた。

 道具は使われていなかったが、怖くて嫌な気分になり、部屋の隅に戻った。暴行は1時間近く続き、本当に怖くなって会館の外に出ると、しばらくして知人も出てきたので車で一緒に帰った。帰り道、この夜の出来事は何も話さなかった。

 その後、奥野さんの死を知り、「本当にびっくりした」。しかし、9月25日に逮捕されたのが奥野さんの家族4人だけで、暴行状況が自分が見た様子と違うため不審に思ったが、「誰にも言えなかった」と打ち明ける。

 一緒に帰った知人は今月15日、傷害致死容疑で逮捕された。「会えばそんなむごいことをする人間でないことがわかる」と女性は強調。「まさか、亡くなるなんて思わなかった。今思えば、どんなに罵声(ばせい)を浴びせられても止めに入れば良かったが、怖くて後ろに下がってしまった。自分がいけなかったと悔やんでいる」と涙を流した。

    ◇

 一方、小諸署捜査本部は16日、引き続き同会施設など18か所を捜索、15〜80歳の会員21人を傷害致死容疑で長野地検に送検した。同会創設者の娘である窪田康子容疑者(49)は午後1時20分、黒いジャージーで顔を隠し、下を向いて乗用車に乗り込んだ。

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nagano/news001.htm