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2007年10月16日(火) 00時00分

サイト売買の仲介で事業橋渡し読売新聞

 企業の合併・買収(M&A)が進む中、インターネットのウェブサイトも売買対象になっている。サイト売買を仲介する「サイトストック」の平野健児取締役に、その傾向を聞いた。

人材紹介と似たビジネスモデル

平野 健児  ひらの けんじ
サイトストック取締役
 1980年、京都府出身。2003年に神戸大学文学部を卒業後、サイバーエージェントに入社し、ネット広告の営業に従事。05年4月に退職し、広告会社のウェブコンサルティングやウェブサイト制作会社設立などを手がける。07年1月にデジパに入社し、サイトストックを創設。同年8月の分社化に伴い現職。
——サイト売買の仲介とは、どのような事業ですか

平野 ビジネスモデルは、人材紹介とよく似ています。

 サイトを売りたいという人がいれば、その内容を確かめた上で売却リストに登録してもらい、買主になりそうな企業に当社が電話で営業します。「買いたい」という相談がくることもあります。売りに出ているサイトの内容と、購入を希望する会社の経営計画が合えば、買い取りを提案します。システムだけを取引する場合もあります。現在、約150のサイトが登録されています。

もともとサイトストックは、ウェブサイト制作会社「デジパ」が運営していたサービスで、既存サイトを買っては、SEO(検索エンジン最適化)やデザイン変更を施していました。自社で買えるなら取引の仲介もできるだろうと話が進み、サイト売買に発展しました。今年8月からは会社として独立しています。

——売買価格はどのように決めているのですか

平野 システムやコンテンツ、ページビュー数やサイト自体の収益力など、計7項目の査定基準から決めています。査定は私どもの社員が行いますが、システムなど専門的なことについては、親会社であるデジパのスタッフに手を借りています。

 私たちが決めるのは、あくまで基準価格で、最終的な価格は買主と売主が決めます。こちらが5000万円と値決めをしても、1億円で売買されれば、市場価値は1億円なのです。我々は売買額の10〜30%を手数料として受け取ります。

——サイト売買が取引対象になる背景は

平野 楽天が日立造船から旅行サイト「旅の窓口」を買った事例のように、サイトを軸とした企業買収は以前からありました。

 企業がサイトを売りに出す理由の多くは、核となる事業に資本や人材などを集中させたいからです。しかし、運営会社ごと買収されると、そうした人材も失ってしまいます。一方、買う側にとっては、手に入れるのはサイトのみ。社員や不動産などが付いてくるわけではないので、企業買収に比べ価格を抑えられます。

——サイト売買に注目した理由は何ですか

平野 一つは、現在のウェブ環境です。検索サイトのグーグルやヤフーが全盛であるため、サイト運営者は検索結果画面のより良い位置に自社サイトを表示させるのに必死になっています。しかし、それならいっそのこと「検索結果の上位にあるサイトを買ってしまえばいいのではないか」と考えました。そうすれば検索結果の上位に自社のサイトが表示されるようになり、継続的に広告費がかかることはなくなります。

 M&Aやスピーディーな経営への注目が高まっており、サイトだけを買うという取引が、経営の選択肢になったのだと考えています。

——どのような取引方法があるのですか

平野 多いのは、システム資産譲渡や事業譲渡です。資産譲渡の場合は、必ずしも株主総会の決議を必要とせず、簡単に手続きできます。

 一方、事業譲渡は、売買の対象になるサイトが個人情報を抱えている場合に用いられます。著作権や商標権をまるごと受け継ぎたいときも事業譲渡の方がよいでしょう。これならブランド力も継承できます。

http://www.yomiuri.co.jp/net/interview/20071016nt07.htm