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2007年10月16日(火) 11時02分

【法廷から】安くても買っちゃだめ!産経新聞

 「偽物だとハッキリお客さんに申し出ていたし、お客さんの要望も強かった」−。昭和55年から続いてきた人気雑貨店の経営者は、偽ブランド品を違法と知りながら売り続けた理由を、ポツリポツリと法廷で語った。
 シャネル、グッチ、カルティエなど高級ブランド品の偽物402点を販売目的で持っていたとして、商標法違反の罪に問われた男性被告(58)と被告の経営する会社の初公判を15日、東京地裁で傍聴した。
 検察側の冒頭陳述によると、同店は海外のアクセサリーなどの雑貨を輸入、販売する会社で、JR蒲田駅ビル内に店舗を構えていた。約3年前、偽ブランド品の販売に手を出し、被告の妻=同罪で有罪確定=が、海外で買い出しを担当。被告は店での接客のほか、店の経理など管理全般を担っていた。今年7月、駅ビル改装工事のため閉店セールをしていた際、家宅捜索を受け逮捕された。
 被告人質問で、検察官は「40g〜50万円で仕入れてきた全品物を、計130万円以上で売ろうとしていた」と指摘。被告は全面的に罪を認めた上で、「本物の30分の1の値段で商品を売っていた」と、偽ブランド販売の実態を供述した。
 さらに、「実際にそういう(本物の)品は高くて普通の人には買えないけど、小遣い程度で求めることができたところが喜ばれたと思います」「お客さんはお金を払って(本物を)身につけることができない人たちでしたから」と、再三にわたってまるで客のかなわぬ夢を実現させてあげたかのような供述を繰り返した。<page/>
 被告は、今の心境について弁護人から質問されると、「(今回のことで)約30年来築いてきた信用やビルへの再入居の話など、すべてを一瞬で失った」として大きく溜息をついた後、「途方に暮れているというのが心情です。まったく軽はずみな行動でした」と肩を落とした。
 だが、最後まで「なくしたものの大きさや、割に合わないつらい思いをしたので、もう二度としません」と弁明したように、客やビルの所有者など身内以外を思いやる言葉は聞こえてこなかった。こうした供述から、被告があくまで自己本位な考えで偽物を売っていることは明らだ。
 偽物を買ってしまう客も客。こうした後を絶たない犯罪の温床に手を貸すことはないだろう。
   (西尾美穂子)

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