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2007年10月15日(月) 12時53分

奈良の家具会社、知的障害者の年金など横領容疑、2億円か朝日新聞

 破産手続き中の奈良県広陵町の家具製造販売会社「大橋製作所」(大橋浩三社長)が、知的障害のある従業員10人の障害基礎年金を本人に無断で引き出し、賃金も長年支払っていなかったことがわかった。元従業員と代理人の弁護士が15日に会見して明らかにし、社長も朝日新聞の取材に「借金返済や運転資金に回した」と認めた。弁護士によると、被害総額は2億円にのぼるとみられる。元従業員らは近く横領容疑などで社長らを告訴し、損害賠償請求訴訟も起こす。

 弁護士らによると、元従業員は県内外の養護学校などを卒業後、同社に就職した20〜50代の男女で、勤続年数は9年〜30年余。大半は会社の寮の大部屋に住み、家具の組み立てなどをしていた。

 今年7月に同社が奈良地裁葛城支部から破産宣告を受け、元従業員らを受け入れた広陵町の障害者福祉施設が預金通帳などを調べたところ、数万円の残高しかないことがわかった。元従業員の障害等級は1級と2級で、障害基礎年金の支給額は1級で年約99万円、2級で約79万円(いずれも07年度)。受給口座の預金通帳や印鑑は会社側が保管し、受給自体を知らない人もいた。勤続年数や県内の最低賃金などをもとに計算すると、年金と賃金を合わせた被害総額は約2億円になるという。

 同社は親元を離れた元従業員の食事や日常生活の世話をする一方、賃金を定期的に渡さず、週末に3000円程度を小遣いとして渡したり、正月に約10万円を支給したりしていた。社内で暴行を受けたと話す元従業員もいるという。

 同社は71年設立。ソファやいすなどを製造販売し、97年には約5億円の年商があったが、海外製品との価格競争もあって近年は経営が悪化した。倒産時は知的障害者11人のほかにパートら10人ほどが働いていた。

http://www.asahi.com/national/update/1015/OSK200710150031.html