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2007年10月14日(日) 05時20分

【Zoom Up】NPOが犯罪の隠れみのに チェック限界「すべて善良は幻想」産経新聞

 NPO法人(特定非営利活動法人)が悪質商法や犯罪の隠れみのになるケースが後を絶たない。出資法違反容疑で警視庁など合同捜査本部の捜索を受けた健康商品販売業「エル・アンド・ジー(L&G)」(東京都新宿区、波和二会長)も、傘下のNPO法人による無料コンサートや勧誘で出資者を募っていた。「行政の認証」「非営利」という安心感を悪用したとされるが、行政のチェックには限界があり、「NPOを盲目的に信用すべきではない」との指摘が多い。(森浩)

 ■「公的機関が認定」…信用

 「NPOだから安心してしまった」

 エル社に数千万円を出資した鹿児島県の60歳代の主婦は悔やむ。1年ほど前、友人からエル社への出資を勧誘された。案内のあった無料コンサートの主催者は「内閣府認証NPO法人あかり研究所」となっており、「公的機関から認められている」と信用した。

 エル社は平成17年6月に内閣府の認証を受け、NPO法人「あかり研究所」を設立。理事には波会長の息子が就き、井上幸彦元警視総監らを顧問に招いた。設立目的には「新しい経済システムを構築する『経済ルネッサンス運動』を提唱する」と記載している。

 しかし、同研究所の実態は「エル社の事実上の一部門」(波会長に損害賠償を求める民事訴訟の弁護人)。有名演歌歌手を招いた無料コンサートを主催し、開演前に「後援企業のコマーシャル」として、エル社の電子通貨「円天」の仕組みなどを紹介していた。

 内閣府は4月、コンサート事業について、「特定の法人の利益を目的としてはならない」と定めた「特定非営利活動促進法」に抵触する可能性があるとして、説明を要求。あかり研究所はエル社を「後援企業」としたうえで、「活動内容を紹介する映像を流したのは事実だが、(エル社が)独自に流した」と回答し、エル社の利益活動への関与を否定していた。

 ■書面提出だけで設立化

 10年の特定非営利活動促進法の施行後、今年8月末までに全国で認証を受けたNPO法人は3万2366団体で、犯罪や悪質商法に悪用された例も多い。

 大阪府警が17年に出資法違反容疑で摘発し、認証を取り消された「新生協会」は、「多重債務者の救済」をうたっていた。だが、実際は債務者に金を貸し付け、会費名目などで実質的な金利を受け取り、債務者を“食い物”にしていた。

 「暴力団の支配下にあったり、企業の宣伝に専念していたりと活動が不透明な団体は多い」(NPO法人代表)。ただ、NPO法人の活動が「非営利」「社会貢献活動」という法の趣旨を貫いているかどうか、行政がチェックする機能は弱い。

 認証にあたり、内閣府による設立者の面接や身上調査はなく、必要なのは書面提出のみ。不認証は1%程度で、ほぼ「届け出」だけで設立できる。「間口を広げて幅広い参加を呼びかけるのが法の趣旨。法改正し、認証基準を厳しくする動きはない」(内閣府国民生活局)という。

 内閣府の国民生活審議会総合企画部会は6月、認証取り消しの基準となる事業報告書の未提出期間を、現行の3年間から2年間に短縮することなどを求める報告書をまとめたが、これが直接、法改正につながるわけでもない。

 NPOの活動を支援する「NPOサポートセンター」(東京)の山岸秀雄理事長は、「NPOはすべて善良というイメージは幻想」と指摘。被害に遭わないため、「設立者の人格から財務状況まで自分で確かめ、見極めることが大切だ」と呼びかけている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071014-00000055-san-soci