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2007年10月13日(土) 17時01分

亀田家に総厳罰を…歴代王者「なめるな」と怒り心頭夕刊フジ

 動きは急だった。日本ボクシングコミッション(JBC)と東日本ボクシング協会(東協)は13日までに、WBC世界フライ級タイトル戦で反則行為を繰り返した亀田大毅(協栄)と、セコンドで反則を指示したとして父、兄を厳罰に処す方針を固めた。動きを急がせたのは、ボクシング界を挙げての亀田家に対する「なめるな」という怒りだった。

 東日本のジム会長らで組織する東協は15日の理事会で、協栄ジムに戒告などの処分を下す。東協の北沢鈴春事務局長は12日、「父親の史郎氏が急所を狙えと指示し、兄の興毅がひじで目を打てと発言したのをビデオで確認した」と明言した。

 TBSの中継が内藤大助(宮田)戦の11R開始前、「ヒジでエエから目に入れたれ」と指示する興毅の声を拾ったのは、夕刊フジ既報通り。史郎氏も「タマ、打ってまえ」などと指示していた。

 JBCも15日に倫理委員会を開いてビデオを検証することを決めた。安河内剛事務局長は「重大な処分になるかもしれない」と話しており、大毅はファイトマネーの没収かボクサーライセンス停止、史郎氏はセコンドライセンス停止といった厳罰を受ける可能性が高い。現役世界ランカーの興毅、協栄ジムの金平桂一郎会長にも厳しい処分が及ぶ見通しだ。

 特に史郎氏は昨年9月の試合では会場の乱闘騒ぎに加担したとして、今年3月にもレフェリーらに暴言を吐いて厳重注意処分を受けており、「次は厳罰を科す」と通告されていた。無期限の資格停止を求める声もある。

 これに対し亀田家も12日、慌てて防戦に出た。史郎氏は「大毅の反則行為は故意ではありません。大毅の若さ、精神的な未熟さが出た結果だと思います」「ただこれも闘志の表れであって、結果として反則行為となってしまったことをご理解していただきたい」。「目に入れたれ」の興毅も「あれは亀田家のボクシング用語で誤解されてるようなもんやない。あれはヒジを上げてしっかりガードして、目の位置を狙えいう意味。亀田スタイルの基本や」と言い訳のコメントを出した。

 だがこんな談話ではボクシング界の怒りは収まらない。東協の大橋秀行会長は「本来なら失格負けにしてもいい試合だった」と言い切り、大毅が暴挙に出た背景として、今回の試合で4Rと8R後に採点を公表するシステムが採用されたことを挙げた。「どうせポイントでは負けているからと失格負け覚悟でやったように僕には見えた。甘い処分をしたり、見逃したりしたら、今後も同じようなことをするボクサーも出てきてしまう。どういう処分になるかは理事の皆さんと決めることになるが、厳しい処分をする方向で動くことになると思う」と語った。

 WBAジュニアフライ級元王者の具志堅用高氏は、白井・具志堅ジム所属の野木丈司トレーナーが内藤のトレーナーを務めていた関係から、試合前に「荒れる試合になる可能性もあるが、大人の対応をしてほしい」と内藤陣営にアドバイスしていたという。そして現実に荒れた試合に「本当にがっかりした。ボクシング界がなめられている。厳正な処分をしなければいけない」と強調した。

 WBC世界ライト級元王者のガッツ石松氏は「これはボクシング界の朝青龍問題といえる。反則指示が本当ならば、協会やJBCなどが厳正な対処をしないと大変な問題になる」と指摘し、「興毅や史郎氏がセコンドにつくこと自体がWBCのルール違反だろう。今回はJBCが例外として認めたが、それ自体が甘かったのではないのか」とも述べた。

 WBCルールは原則的に親兄弟がセコンドにつくことを認めていないが、JBCはこれまで、史郎氏ばかりかセコンドライセンスのない興毅のセコンド入りまで容認してきた。

 石松氏はまた、騒動を繰り返す亀田一家について、「ルール違反ばかりやっている。みんながあんなもんだと思われたら、スポーツだという意味がない。JBCも東協も、毅然(きぜん)とした態度で粛々と対応しなければいけない。もし、僕が当事者ならば当然、厳罰に処する」と語った。

 協栄ジムは12日、25日に横浜パシフィコで行う予定だった興毅のノンタイトル10回戦を中止にすると、唐突に発表した。理由は「対戦相手が決まらなかった」という不可解なものだが、史郎氏、または興毅本人のライセンスが25日時点でどうなっているか分からない。すでにチケットは販売中で、15日から払い戻し手続きを始めるが、損害を最小限にとどめるための中止との見方もある。一家の反則の代償は、とてつもなく大きい。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071013-00000008-ykf-spo