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2007年10月12日(金) 00時00分

「赤福、お前もか」 関西各地の店頭から一斉に姿を消す朝日新聞

 老舗(しにせ)「赤福」(三重県伊勢市)で新たに発覚した消費期限の偽装問題を受け、大阪市内のお土産店などから関西土産の定番でもある「赤福餅」が一斉に消えた。「赤福、お前もか」——。またしても明るみに出た「食の安全」を揺るがす事態に、消費者は不信感を募らせている。

 JR新大阪駅構内にあるお土産店では12日午前7時前の開店時に「赤福餅」が店頭から姿を消していた。赤福餅が並んでいたコーナーには別の商品が陳列され、「伊勢 赤福 名物」と書かれた看板は紙で覆い隠された。

 JR構内の売店を管理する「ジェイアール西日本デイリーサービスネット」は同日朝、ニュースで農水省などが立ち入り調査をしていたことを知り、「商品の搬入はしない」と連絡した。担当者は「詳しい状況はわからないが、お客様のことを考えて、念のため販売を控えた」と話していた。

 一方、大阪と伊勢を結ぶ近畿日本鉄道によると、同社は沿線にある59店舗でこの日朝、店頭にあった「赤福餅」を撤去した。同社は「事実確認ができるまでは、店頭に置かない措置をとった」と説明している。

 大阪・ミナミの近鉄難波駅の売店で買い物をしていた岡山県の女性(59)は「『赤福、お前もか』という感じ。がっかりです。お土産によくもらうだけでなく、自分でも買って食べていただけに裏切られた気持ちです」と話した。

 名古屋に行くためJR新大阪駅を利用していた大阪市淀川区の会社経営伊藤順造さん(71)は「偽装した事例が過去にたくさんあるなか、なぜまた同じことが起きるのか。老舗の看板を汚してまで利益を求めたとしたのならば倫理観の欠如としかいいようがない」とあきれていた。

   ◇  ◇

 赤福は江戸時代の1707年に創業した。当時、庶民の旅といえばお伊勢参りで、長旅で疲れた参拝者のために、伊勢神宮の辺りに餅を売る店が並んでいたという。赤福の由来は、真心を尽くして相手の幸せを喜ぶ「赤心慶福」。伊勢神宮の敷地を流れる五十鈴川にちなみ、餅は水底の石、さざ波模様のあんでせせらぎを表しているという。

 約300年たった今なお、伊勢神宮内宮前のおかげ横丁にある赤福本店には多くの参拝客らが詰めかける。この日はいったん開店したものの午前11時すぎに販売を中止して店を閉じ、「諸般の事情により当面の間 誠に勝手ではございますが、臨時休業させて頂きます」との張り紙が出された。

 閉店前に8個入りの赤福餅2箱を購入した大阪府泉大津市の会社員山田幸嗣さん(32)は、「赤福ファンなのでちょっと残念。名物だから伊勢に来た時はいつも買っている」と話していた。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK200710120032.html