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2007年10月11日(木) 03時00分

「デスパ」名で自殺・報復依頼者募る 嘱託殺人容疑者朝日新聞

 合法、違法を問わずどんな仕事でも請負います。復讐(ふくしゅう)、薬、自殺幇助(ほうじょ)etc,何でも致します——。「自殺サイト」の文言をきっかけに、殺人事件が起きた。川崎市で一人暮らしをしていた西沢さやかさん(21)は、サイトに近づき、初対面の千葉県市原市の斉藤一成容疑者(33)に20万円を払って、自分の命を委ねたとされる。斉藤容疑者がネット上で名乗っていたとみられる「デスパ」は、さまざまな掲示板に登場し、自殺の手伝いや報復の仕事などを探していた。

 「自分では出来ない頼み事。殺したい程憎いヤツがいる。ムカつく奴(やつ)に天誅(てんちゅう)を。探して欲しい人、物。請け負います」

 睡眠導入剤を違法に販売したとして斉藤容疑者が神奈川県警に逮捕される10日前の7月14日未明、「デスパ」が管理人を務める掲示板サイトには、デスパの名前でこんな書き込みがあった。

 5月9日には「自分では躊躇(ちゅうちょ)してしまう。いく手助けして。どんな事でも相談下さい」。「いく」は「逝く」を指し、自殺や殺人の幇助をほのめかしたとみられる。

 ネット上には、様々な掲示板に「デスパ」が登場する。いずれの画面からも同じ携帯電話のメールアドレスにつながったり、同じ掲示板のアドレスが記されていたりすることから、斉藤容疑者につながる可能性が高い。

 これまでの自殺サイトをめぐる「事件」と比べ、今回は金銭が表面化したのが特徴だ。「デスパ」の書き込みには「詳細、料金はHPまたはメールにて」の言葉が並ぶ。掲示板には「自殺の手助けも依頼できますか? 費用はどのくらいになりますか?」という質問も見られた。

 青酸カリの精製方法についてのやり取りもあった。「内容は言えませんが、他より安く、確実に依頼を実行してもらいました」という依頼人からのコメントもある。

 「デスパさんは千葉で探偵業を営まれているんですか?」と尋ねられると「詳細は言えません」と応じていたものの、「プロかどうかはわかりませんがこの稼業は随分ながい事やっています」と明かしていた。

 自殺サイト以外の掲示板にも「デスパ」名の書き込みがあり、あちこちで依頼者を募っていた様子がうかがえる。ある掲示板には「どんな仕事でも請負います。詳しくはメールで」とあり、依頼者とは携帯電話やネットのメールでやり取りしていたとみられる。

 一方、斉藤容疑者が逮捕される7月まで住んでいたのは、千葉県市原市の市街地から約4キロ離れた住宅地だった。2階建てアパートの一室に、妻と小学3年の長女の3人で暮らしていた。

 近くに住む男性は昨年の12月から今年1月ごろ、斉藤容疑者がアパート駐車場に止めた車内で、携帯電話をいじっている姿をたびたび見たという。午後8時〜9時ごろだったと記憶している。長いときは1時間を超えることもあった。「家に入らずに何をしているのか不思議だった」

 パソコン周辺機器などを斉藤容疑者宅に届けたことがあるという宅配業者(32)は「いつも帰宅が遅く、午後9時以降に荷物を運ぶことが多かった」と振り返る。

 一方、斉藤容疑者の長女と同じ年の娘がいる近所の主婦(33)は、斉藤容疑者と近くのプールで会った時、娘らの面倒をよくみてくれたことを覚えている。娘に「泳ぎが上手になったね」と笑顔で話しかけてくれたという。長女が通っていた小学校の関係者は「授業参観にも来る子煩悩な人だった」といい、同級生の娘を持つ主婦は「運動会にも必ず来ていた」。

 それだけに今回の逮捕に驚きは少なくない。斉藤容疑者宅近くの別の女性は「とても良い方でした。とても信じられません」と動揺していた。

http://www.asahi.com/national/update/1011/TKY200710100376.html