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2007年10月10日(水) 08時00分

疑惑登記口利き 村上元行革相の秘書 六本木のビル 支援者依頼受け産経新聞

 自民党衆院議員の村上誠一郎元行政改革担当相(55)=愛媛2区=の秘書(67)が大臣秘書官だった2年前、村上氏の支援者の依頼を受け、東京・六本木の通称「TSKビル」を設立した東亜相互企業の社長解任登記を急ぐよう、東京法務局に口利きしていたことが関係者の話で分かった。支援者は東亜相互を実質支配しTSKビルの再開発を有利に進めるため、社長解任を計画。しかし、登記申請の前提となった株主総会は違法性が強く登記手続きが進まなかったため、村上氏の秘書に口利きを依頼したとみられる。

 TSKビルをめぐっては、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の土地・建物をめぐる詐欺事件で起訴された元公安調査庁長官、緒方重威被告(73)らによる不正取引疑惑が判明しているが、新たに大臣秘書官の口利き行為が明らかになった。

 支援者は東京都港区の商社社長(58)。村上氏と同郷で、平成10年に村上氏の資金管理団体「信誠会」に9万円を献金している。秘書とは地元高校の先輩後輩の間柄という。

 関係者によると、商社は東亜相互企業を実質支配し、16年2月に東亜相互が所有していたTSKビルの土地・建物の所有権を取得した。その後、東亜相互の創業者で元暴力団組長の故町井久之氏の内妻(90)が社長を務めていたが、商社社長に不信感を抱き、距離を置き始めたことから、商社社長は東亜相互の支配を継続するため内妻の社長解任を計画した。

 商社社長は17年9月26日、株主で役員だった故町井氏の長男(46)に都内のホテルで東亜相互の臨時株主総会を開催させた上、内妻側の総会出席を妨害し、内妻を役員に再任しない決議を強行。さらに取締役会で社長解任を決め、同日、役員変更登記を東京法務局港出張所に申請した。

 内妻側は「株主を会場に入れなかった総会は違法」として港出張所に登記申請の却下を要請する一方、9月29日には総会と取締役会の決議不存在などを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。

 これに対し、商社社長は秘書に口利きを依頼。秘書が翌10月3日、港出張所を訪れ、所長に秘書の名刺を渡した上で「一日でも早く登記してほしい」と要請した。だが、出張所は「書類に不備がある」などとして登記手続きを進めなかった。

 この日は仮処分申し立ての審尋当日で、商社社長は東京地裁が内妻側の申し立てを認める決定を出すことを予想し、決定が出る前に登記を済ませようとしたとみられる。実際、同月5日に地裁は内妻側の主張を全面的に認める決定を出し、商社社長側は異議申し立てをしたが却下され、申請は取り下げられた。

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【用語解説】TSKビル

 今春オープンした東京・六本木の東京ミッドタウンに近接する超一等地に建つビル群の通称。元暴力団組長の故町井久之氏が社長を務めていた東亜相互企業が昭和40年代から、敷地面積約3800平方メートルの土地に5棟のビルを建設。平成14年の町井氏の死後、暴力団関係者や不動産ブローカーが横行し、権利関係は複雑に。現在、高級クラブなどが入っていたビルは老朽化が目立ち、大半は空き部屋になり、「幽霊ビル」と呼ばれる。再開発が成立すれば数百億円が動くとされる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071010-00000084-san-soci