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2007年10月09日(火) 23時51分

L&Gの「円天」商法 10日に被害弁護団結成産経新聞

 「使っても減らない電子マネー『円天』を広め、世界を変える」。現実味のある話を繕った投資詐欺と異なり、荒唐無稽(むけい)な話を信じ込ませ、1000億円を集めたとされる健康商品販売業、エル・アンド・ジー(L&G)=東京都新宿区、波和二会長=の出資法違反事件。被害拡大の背景には、疑似通貨の普及という時代の流れと、親戚(しんせき)や親しい知人を狙う勧誘方式があった。都内の弁護士らは10日、被害対策弁護団を結成し14日には被害者向け説明会を開く。

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 「無血革命で政治を変える。世界政府を作る」
 波会長が会員に語っていたのは、円天を世界通貨にすることだけではなかった。経済格差と戦争のない「あかり天国」の実現に賛同する「あかり党」の議員を選出させ、政治変革をすることも訴えた。
 こうした「波教」とも呼ばれる理念に加え、契約状況も現実離れしていた。たとえば、出資者に送られてくるのは「預かり証」だけというずさんさ。ところが多くの会員は疑問を持たず、疑惑の表面化後も「波会長は人のために役立とうとしている。詐欺ではない」と話す会員もいた。

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 「電子マネーなど『疑似通貨』の取引や、買い物額に応じてたまるポイント制が普及し、現金以外の買い物に抵抗感を感じなくなったことが円天商法を後押しした」(捜査幹部)。
 決済機能を持つ「おサイフケータイ」の対応端末は携帯電話保有者の3人に1人が持ち、大手私鉄各社などの「パスモ」は在庫が不足するほどの人気ぶり。エル社は時流に沿い、携帯電話で利用する円天を考案し、インターネット上やバザーで貴金属などと交換できる仕組みを作った。
 波会長は「庶民で理論を分かって動く人はいない。円天市場の洋服を買って、また円天をもらう。そういう体験だけでいい」。電子マネーへの安心感を逆手にとり、円天導入で出資金を加速度的に伸ばした。

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 団塊世代の大量退職、低金利時代、年金不安…。国民生活センターに寄せられたエル社に対する相談は55%超が60歳以上からで、高齢者の不安に漬け込んだのも、エル社の特徴だ。
 「身近な人が勧誘されたため、都心よりも地縁、血縁が強い地方に被害者が多い」。被害相談を受けた弁護士がこう分析するように、関東(244件)のほか、北海道・東北(247件)、九州(239件)からの相談も多かった。
 だが会員は被害者ばかりではない。マルチ商法を渡り歩く「渡り鳥」と呼ばれる人間が、エル社の上級会員として、多くの新規会員を勧誘するなどして利益を上げたとされ、「うちが過払いした人だって、いっぱいいる」(波会長)。警視庁幹部は「マルチ商法が後を絶たない側面のひとつだ」と指摘している。

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