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2007年10月07日(日) 07時10分

『飛び込み出産』増加 死産など高リスク 搬送拒否要因にも東京新聞

 妊婦健診を受けないまま、突然病院を訪れて出産する「飛び込み出産」が増えている。神奈川県で昨年は二〇〇三年に比べ倍増、東京都内でも増加傾向だ。八月に奈良県で救急搬送を拒否され救急車内で死産した妊婦も同様のケースだった。背景には、産科医不足や健診費の負担感があるとみられる。出産費を踏み倒すケースもあるという。こうした出産は死産などリスクが高まることから医療機関は敬遠しがちで、救急搬送先がみつからない「たらい回し」に拍車をかける要因にもなっているようだ。

 神奈川県産科婦人科医会の集計によると、妊婦健診を受けないまま、同県内の基幹病院(八施設)に飛び込んで出産した件数は、〇三年は二十件だったが、昨年は四十四件と倍増した。今年は四月までに三十五件と百件を突破する勢いだ。若年層や外国人、経産婦に多く、約半数が救急車で搬送されたという。

 日本医科大学多摩永山病院(東京都多摩市)の集計でも一九九七−二〇〇一年には十六件だったが、〇二−〇六年には二十三件と増加傾向で、今年も五月までに二件の飛び込み出産があった。

 集計した四十一件の妊婦のうち二十九歳以下が約六割を占めた。経産婦が二十六件と六割を超え、うち四件は前回の出産時にも受診していなかった。十一件で入院費が支払われず、四件で子どもを置き去りにした。

 受診しなかった理由は多い順に▽経済的問題▽妊娠に気づかなかった▽家庭の事情▽放置した▽不安だった−など。

 飛び込みだと、妊娠週数や合併症などの妊娠状況がわからず、適切な医療行為ができない懸念もあり、早産や死産のリスクも高くなる。

 こうした出産が増える背景について、横浜市立大学医学部の平原史樹教授(産婦人科)は「産科医不足で身近な健診施設や産める施設が減ったため」と分析、「健診費(一回五千円程度から)の負担も大きいようだ」と話す。出産後に入院費を支払わないケースも「珍しくない」という。医療機関側は、高リスク出産による訴訟リスクを回避するため、飛び込み出産を断る施設も出ている。

<メモ>妊婦健診 妊娠6カ月まで月に1度、その後2週間に1度、妊娠10カ月以降は1週間に1度のペースで受ける。費用は自己負担で1回当たり5000円程度だが、血液検査などを行うと1万円以上になる場合もある。国は本年度から5回分を公費で負担するよう、自治体に通知を出している。

(東京新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007100790070820.html