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2007年10月06日(土) 14時46分

力士死亡は一連の暴行が原因か 兄弟子ら、激しいけいこも東京新聞

 大相撲時津風部屋の序ノ口力士、斉藤俊(たかし)さん=当時(17)、しこ名・時太山(ときたいざん)=が死亡した問題で、愛知県警捜査1課と犬山署は死因となった「多発外傷による外傷性ショック」を引き起こしたのは、死亡前日と当日に続けて兄弟子たちが行った暴行や激しいけいこなど一連の行為との見方を強めた。

 県警は兄弟子数人の立件に向けた捜査をしている。暴行やけいこは兄弟子たちによる集団的な行為で、個々のどの行為が致命傷になったかを解明するのは困難なため、一連の行為としてとらえている。

 県警の調べで、斉藤さんの体には無数のあざや傷があり、他人から受けた外傷でショック死したことが、5日発表された組織鑑定の結果でも裏付けられた。

 斉藤さんは死亡前日の6月25日昼、けいこ場から逃げ出して連れ戻された。同日夜、親方に頭をビール瓶で殴られた後、数人の兄弟子たちに殴られるなどした。翌26日午前には、相手を押し込むぶつかりげいこを、通常5−10分のところを約30分もやらされた。

 斉藤さんはぶつかりげいこの直後に倒れ、その後病院で死亡した。しかし死因を当日のけいこだけ、あるいは前日の暴行だけのいずれかに断定することは難しく、県警は暴行と長時間のけいこの二つの行為が連続して、斉藤さんの体に激しいダメージを与えたとみている。

◆「土俵外での暴行なんて」 困惑する後援者ら

 愛のムチか、ただの暴力か−。時津風部屋の序ノ口力士、斉藤俊さんの急死は、暴力や過度のけいこによるものだった可能性が高まっているが、大相撲をよく知る人たちからは怒りや嘆きより、むしろ戸惑いの声が漏れる。

 斉藤さんが倒れたのは30分にも及んだ「ぶつかりげいこ」の最中だった。愛知県内でちゃんこ屋を営む元力士は「すごくつらいけいこで、5分もやれば限界。30分も続ければ確実に立ち上がれなくなる」と証言。金属バットやビール瓶を使うにいたっては「力士は体が資本。体に支障が出ることはしなかった」とし、今回は「明らかに行きすぎ」と言い切った。

 名古屋場所で20年以上、ある部屋の宿舎となっている愛知県江南市の寺の住職(51)によると、けいこ中にたたくことはあるが、お尻を竹の棒で、がせいぜい。「暴行は一切見たことがない」という。また、別の部屋の宿舎になっている名古屋市内の神社の宮司(57)も兄弟子が竹刀でたたく姿をよく見るが「土俵外での暴行なんてあり得ない」と首をかしげた。

 また「先輩が後輩をビール瓶で殴る。どんぶりいっぱいに入れた酒を『おまえ飲め』。そんなのは昔からあった」と打ち明けるのは、ある相撲部屋を後援する名古屋市北区の女性(56)。そのうえで「昔の力士は勘所を心得ていたし、同じ暴力でも情があった」と今回との“差”を訴えた。

(中日新聞)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007100690144213.html