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2007年10月04日(木) 09時41分

40代女性はゴミなのか? 就活体験記ツカサネット新聞

10月から社会で何が変わったといえば、やはり最大のできごとは郵便局の民営化だろうと思うが、比較的小さなことで私には強い関心があるのは、企業の求人の際に年齢制限をすることが禁じられたということだろうか。

私は現在40代で休職中の身なので、年齢制限が撤廃されたことはありがたいことだ。企業の求人では「40歳まで」と壁を設けるところが多かったからだ。けれども法律で年齢制限が撤廃されたからといって、では明日から企業の側の年齢差別がなくなるというかというとそうそう安直にはいかない。

以下は、まだ年齢差別が堂々とまかり通っていたときの私の求職体験談である。

私は長らく病気療養中の身だったのだが、それも全快に近くなってきたので、無職の身に終止符を打ちたいと思って、職を探してみることにした。

手ごろなところで、新聞の折り込みチラシに入っていた自宅近くの小さな会社の事務員に応募してみることにした。チラシには「40歳まで」との制限が書いてあったが、私の場合ほんの少しオーバーしているだけなので応募しても大丈夫だろうと思って電話をしてみた。

応対にでたのは20歳そこそこと思しい女性社員であったが、私の年齢を聞くと、「40歳以上は飲み込みが悪いからだーめ!」とぴしゃりといってはねつけるのだった。「40歳以上といってもほんの少し過ぎているだけですが?」と食い下がると、「とにかくだめだめ!」の一点張り。

なるほど私は40歳は過ぎているといっても、地元の有名大学の出身であるし、英語は堪能、パソコンはばりばり、見てくれだっていまだに20代と間違えられる。20歳そこそこのろくに口の利き方もしらないような若い女の子よりは、よほど稼働能力があると自負するものだ。

けれども人事をまかされたこの若い女の子のなかでは、「40過ぎのおばさん」というのは能力の衰えた使い物にならないものだというイメージが定着しているらしい。この年齢偏見の壁を打ち破るのは、なかなかに困難だ。私はあきらめて次を当たることにした。

次は、これも新聞の折込チラシの求人広告だった。とあるインテリア製品製造工場のパートの仕事だが、こちらは年齢制限など書いてなかったので簡単に採用されるのではないかと思って応募しようとした。

電話をすると「いまからきてください」とのことだったので、さっそく出かけた。ところが会社で案内を請うとしばらくお待ちくださいと待合室の席をあてがわれたのだが、15分たっても30分たっても担当者があらわれない。40分も過ぎたころ、やっと30そこそこと思しい男性があらわれたのだが、40分も待ちぼうけを食らわせたことには一言の謝罪もなかった。

私は履歴書を出してみせた。私は、大学出と書くと「使いにくい」と思われることを警戒して最終学歴を高卒にしておいたのだが、人事の男性はその履歴書を見ると、年齢欄に目を留め「40過ぎですか」と鼻先でせせら笑うようにいった。

そののち仕事の現場である工場を見学させるというのでついていったが、男性は「ここがその機械」といって、カーテン裁断機をあごでしゃくって見せた。いかにも現場労働に従事するものを小ばかにした態度がありありと見て取れて、私は押し黙らざるを得なかった。

面接は40分も待った割には短い時間で済んだ。私はそののち採否の連絡が届くのを待ったのだが、その連絡はいつまでたっても来なかった。つまり結果不採用だったのだろうが、その連絡ひとつよこさないような人事係だったのだ。

私は秋風が身にしみる思いにとらわれた。労働市場では、企業側の意識として「女性、しかも40過ぎ」はほとんどゴミのような扱いをしても当然だとされているのではないか。企業側のこのような強固な意識が変わらない限り、いくら採用広告に制限を禁止したとしても就職における年齢差別はなくならないだろう。

政府は年齢差別撤廃の新方針を麗々しく打ち出したものの、小手先を変えてみせただけの対策に中高年の求職者は希望など抱けないのが実感である。


(記者:千地有井)

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