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2007年10月04日(木) 14時06分

10月4日付 よみうり寸評読売新聞

 〈石川や浜の真砂(まさご)はつきるとも世に盗人の種はつきまじ〉——豊臣時代の大盗・石川五右衛門の辞世とされている。歌舞伎では、名場面・山門での〈絶景かな、絶景かな……〉と並ぶ名セリフでもある◆大盗が言うように盗人は今も絶えることがない。が、当今、この〈石川や…〉を聞いて、浜の真砂のように尽きることのないものというと盗人よりも、悪質な〈マルチ商法〉の方を思い浮かべる◆捜査のメスが入って消えたかと思うと、またぞろ表れ、また消えては浮かぶ。あきれるほどだ。残念だが〈浜の真砂〉は被害者についても言える◆3日、警視庁は東京・新宿の健康商品販売会社「エル・アンド・ジー(L&G)」の本社などを出資法違反(預かり金の禁止)の疑いで一斉捜索した◆L&Gは会員限定の独自の通貨「円天」と年36%もの高配当を誘い文句に会員を増やした。集金システムは、高額な紹介料で会員に新会員を集めさせるマルチ商法そのものだ◆中心人物の波和二会長は1970年代からマルチにかかわっていた当世の〈浜の真砂〉の元祖らしい。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20071004ig05.htm