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2007年10月03日(水) 13時55分

ラーメン屋は3軒目からが大変オーマイニュース

 東京ではここ数日、半袖では肌寒い日が続いている。夏場にラーメンを食べると汗だくになっていたのが、ちょうど良い季節になってきた。ラーメンがおいしく食べられる「食欲の秋」。業界向け展示会「ラーメン産業展2007」が、2日からパシフィコ横浜で始まったので、変わったラーメンや食材に出会えるかもと思い、会場へ行ってみた。

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 会場には、麺やスープ、調味料、デザート、器、製麺機、食券販売機など、ラーメン店で必要となるものが展示されている。店舗で使用するもの以外に、フランチャイズの加盟店募集を行っているブースもあり、ラーメン店を開業したいのならば、どんなものでも揃う展示会だ。中には真新しい食材も展示されており、ラーメン店主や食品メーカーの担当者が、話を聞いたりサンプルをもらうなど、約300社のブースを熱心にまわっていた。

 広い会場を一通りまわると、盛況だったのがスープメーカーのブース。記者は「ずんどうのないラーメン屋で、うまかった店はない」という経験があり、スープメーカーのブースで、出来合いのスープに興味を持っている人が多いことに戸惑いを覚えた。そこでブースの担当者に話を聞いてみた。

■ガラを置く場所がない

 業務用調味料を手がけるアリアケジャパンのブースには、紙パックに入ったラーメンのスープや鶏ガラ、豚ガラのパックが並ぶ。スープの顧客のうち、半分が社員食堂や学食の業者、残り半分がラーメン店だという。ラーメン店でそのまま使っているのか担当者に尋ねると、

 「社員食堂などではそのまま使っているようです。しかし、ラーメン店ではチャーシューの煮汁などを加えて独自の味に仕上げているようですよ」

とのことで、さすがに買ってそのままというお店はあまりないようだ。一方、ガラのパック製品については、

 「多くのラーメン店は店舗が狭く、冷凍庫も小さいので、ガラの保存が大変なんです。ガラのパック製品は冷凍品が主流ですが、うちのは常温で保存できるので、場所を選ばずに保管できますよ」

 どうやら、手間暇よりも場所の制約もあって重用されているようだった。

■3店舗以上で味を保つのは大変

 「オーダーメードしませんか?」──。チラシでこう呼びかけるのは、日本たばこ産業(JT)の子会社ジェイティフーズ。昨年からラーメン店からの依頼通りにスープを作る事業を始めた。化学調味料を使わない「無化調」(むかちょう)を基本として、ラーメン店から依頼のあったスープの製造を代行する。試飲した魚介とガラの「Wスープ」は、ヘタに街中で食べるラーメン店のスープよりおいしかった。

 担当の下田和明さんによると、約3軒を境に同じ味を保つのが難しくなるようだ。

 「3、4店舗以上になると、一定の味を保つのが難しくなるようです。3店舗以内だと本店で作ったスープを配送できるのが、それ以上だと作る場所や配送時間などで難しくなるようですね。店舗数が増えても創業者の味を守りたいというリクエストが多いです」

 このオーダーメードのスープは、店で使える完成品の一歩手前の状態や、そのまま使える状態なども、すべて希望通りに作れるという。オーダーメードというと値が張るようだが、3店舗程度で使う量であれば、既製品を買い集めてスープを作るのと大差がないそうだ。

 「こちらとしては完成品として製造しても、実際にお店に食べに行くと、やっぱり一手間加えているんですよ」

と下田さん。契約先には有名店もあるとのことだが、おいしいお店は最後の一工夫を惜しまないのだ。

 店の数が3店舗を超えると、味を一定に保つのが大変になるだけではなく、経営も難しくなるようだ。外食産業向け経営管理システムを出展するNECインフロンティアの担当者は、「3店舗以上になると、在庫など各店舗の経営に目が行き届きにくくなる」という。1店舗から導入できる同社のシステムは、1つのチェーンで5〜10店舗の規模で店舗展開を行うラーメン店でも、売り上げに加えて在庫管理などが行える。売り上げを伸ばすだけではなく、無駄を省く経営ができるという。

 繁盛して規模が大きくなると、味や経営で一苦労する。その分岐点が3店舗のようだ。

■黒にんにくも登場

 会場を歩いていると、ラーメンとは一見関係のなさそうなものに出くわした。体に良いと静かなブームになっている「黒にんにく」だ。発酵させることで中身だけ黒くなった黒にんにくは、通常の生にんにくと比べてポリフェノールの含有量が3〜10倍程度多いという。

 健康食品を取り扱う三健食品のブースの前では、青森県田子町のにんにくを使用した商品の試食品が配られていた。食べてみると、にんにくよりもプルーンに近い味と食感に驚かされる。においも30分程度でしなくなるとのことで、訪れたラーメン店主がサンプルを持ち帰っていた。

 同社の浦田繁専務によると、ラーメン店で使うトッピング以外に、製麺メーカーからも引き合いがあり、黒にんにくの粉末を練り込んだ麺が製品化される可能性もあるという。
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 このほか、「わずか19坪で月商1600万円」とフランチャイズ加入を誘うブースや、「成功するためのノウハウを伝授」など、ラーメン店経営者や開業を目指す人には刺激的な言葉が目立った。

 また、有名店「ちゃぶ屋」店主・森住康二さんらを講師に迎えた「有名店は一日にてならず。覚悟がなければヤメタ方が良い」と題したセミナーも開かれた。開業を考えている人にはキツイひと言だが、これが現実だろう。

 開催時間は午前10時から午後5時までで、4日まで開かれる。入場料は3000円で、ウェブサイトから事前登録を行うと無料。業界向けの展示会のため、入場者が限られているが、これからラーメン店の開業を考えている方は、訪れてみてはいかが? 

(記者:吉川 忠行)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071003-00000002-omn-bus_all