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2007年10月03日(水) 10時20分

生保不払いの本当の問題ツカサネット新聞

生保不払いの累計金額が4月集計から大幅に増え、600億円を超える見通しとのニュースを見ました。あまりにも加入者をばかにしたような結果で、開いた口がふさがりません。問題の大きな原因は「特約の支払いもれ」です。

具体例としては、
・入院給付金を支払ったものの、手術の給付金を支払っていない
・がんで入院との診断書にも関わらず、がん給付一時金を支払っていない
というようなものです。

契約者は難しい保険の内容までは完全に把握できないものなのに、特約も請求をしなくては給付を忘れられてしまう、ということ。これらは支払い担当者の知識不足が原因にあげられますが、システムの改善で対策をする会社も多いようです。

しかし、今までの業界体質を考えれば、問題はこういった点ではないように思います。「不払い」とは、本来支払うべき保険金を支払っていなかったということ。「約款」をたてに拒んだ「不払い」は、カウントされていません。

「約款」をたてに支払いを拒むとは、どういうことなのでしょう?

保険に加入する際には、「告知書扱い」「面接士扱い」「医師扱い」などで現在の健康状況を申告する必要があります。保険金額や保険会社等によって方法は違いますが、いずれにせよ調べることは同じ。病気の人は入れない、ということです。(最近では、病気の人でも加入できるタイプの保険が登場していますが、保険金額が抑えられていたり、保険料が高かったり、デメリットが多い点も特徴です)

この告知には「過去6か月以内に通院したり医師の投薬を受けたことがありますか」などと通院歴を問う質問も含まれています。これを軽く考えて、「いいえ」に○をつけてしまうことで後々に問題が起きてしまうことになるわけです。

保険会社も営利を目的としている以上できるだけ保険金を支払いたくないので、支払い前に調査をすることになります。保険金詐欺に配慮しなくてはいけない事情もあるのでしょうけれど。具体的には、被保険者の自宅付近の病院を中心に、過去の通院歴がないかどうかを問い合わせていくのです。

個人情報の保護が進んでいますが、これは正規の調査ですので、今でも行われています。この調査結果で通院歴が発覚すると、「告知義務違反」として保険金の支払いを拒み、契約も解除してしまうのです。それまでに払った保険金が戻ってくるということもありません。

単なる風邪や軽い腹痛でも同じこと。軽い症状だと自分の記憶から消えてしまいがちですが、しっかり記録は残っているので、保険会社は「約款」をたてに支払いを拒むことができる、というわけです。

さらに悪質な問題が、取扱者による「虚偽告知の誘導」です。保険営業は完全なノルマ制。契約高に応じて給料が支払われるため、誰もが契約を取るために必死です。やっと見つけたお客様が、病気や通院を理由に契約できなくては1円にもなりませんね。

そこで行われるのが「虚偽告知の誘導です」。先の調査が行われるのは、契約から2年と言われていますので、「2年以内に請求しなければ大丈夫」と無責任なことを言って、病歴を申告させないのです。自分は契約が取れれば、それで終わり。しかも、離職率が高い職場ですから、いざという時には当の取扱者がいないということも多いのです。

後になって調査を行なうというこのシステムでは、いざという時に保険が全く役にたたなくなってしまう可能性ができてくるのです。契約者が注意することはもちろん必要ですが、加入時に健康チェックを厳しくするなど、改善することが最優先ではないのでしょうか。


(記者:さくらんぼうず)

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