記事登録
2007年10月01日(月) 20時03分

ネットオークションの「委託詐欺」にご注意読売新聞

 ネットオークション詐欺が巧妙になってきている。出品者になりました犯人による「委託詐欺」や「次点詐欺」、フィッシングを利用した「ID乗っ取り詐欺」などが増えてきた。オークションへの安易な参加は避け、十分に警戒をしたほうがよい。(テクニカルライター・三上洋)

「委託詐欺」は「次点詐欺」の変形版

 ネットオークションで最近増えている「委託詐欺」とは、落札直後を狙って「お支払いの件で連絡したいことがあるので」というメールが届くもの。メールに返事を送ると「実はこの商品は知人からの委託品。商品はこちらから発送するので、お金は知人の口座へ直接振り込んで欲しい」と伝えてくる。

 実際は詐欺であり、出品者になりすました犯人が落札者に向けて送信している。本物の出品者との連絡が済まないうちに、代金をダマし取ろうとするため、「至急お願いします」「出先からなので取引ナビが使えない」と言ってくるのが特徴だ。安易な手法ではあるものの、住所や氏名・電話番号などを書いているため、お金を振り込んでしまう被害者がいるようだ。

 この手口は流行している「次点詐欺」の変形版と言えるだろう。

 次点詐欺は、「落札者がキャンセルをしました。次点のあなたに権利が移ったので買いませんか? 落札価格より安くしますよ」というメールを送りつけるもの。本物の出品者ではなく、詐欺の犯人が出品者のフリをしてメールを送ってくる。もう有名になった手口なので、ダマされる人は少ないだろうが、現在でも次点詐欺のメールが大量送信されているようなので警戒が必要だ。「次点です」「知人からの委託です」というメールが来たら、詐欺だと疑ったほうがいいだろう。

 ただし「委託詐欺」「次点詐欺」は、詐欺の手口としては幼稚なもの。オークションのベテランでさえダマされる巧妙な手口も使われている。

「ID乗っ取り詐欺」はベテランもダマされる

 もし取引した相手が、以下のような状況だったら、あなたはお金を振り込むだろうか? ちょっと考えてみてほしい。

・商品は携帯音楽プレーヤー。価格は1万円前後

・出品者の評価は100件以上。「悪い」はまったくない

・1か月以内の取引実績がある

・メールアドレスはプロバイダーのもの

・口座はYahoo!オークションのトラブル口座には見当たらない

 これなら問題ないと取引する人が多いのではないだろうか。唯一気になるのは、Yahoo!オークションの取引ナビ(オークション画面でお互いに連絡するシステム)を使っていなかったことぐらいで、これ以外はすべて問題なさそうな出品者だった。

 ところがこの取引が詐欺だったのである。筆者の友人、それもオークションをよく利用していたベテランがダマされた事例である。犯人は捕まっていないので手口は不明だが、どうもオークションIDとプロバイダのメールを乗っ取ったパターンのようだ。何らかの方法で正規のユーザーのIDとパスワードが盗み、それを悪用してお金をダマし取るものだ。

 この「ID乗っ取り詐欺」の犯人は、フィッシング詐欺かパスワードの類推により、他人のYahoo!IDを乗っ取っているようだ。フィッシング詐欺とは、偽画面に誘導して、他人のIDとパスワードを盗み取るもの。2005年ごろからYahoo!オークションIDを狙ったフィッシング詐欺が頻発しており、2006年には2件の逮捕者も出ている。

 またパスワードの類推で他人のIDを利用するパターンもある。IDに付いている数字や、プロフィールに書かれた誕生日などからパスワードを推定。偶然に当たったIDを乗っ取ってオークション詐欺に使ってしまう。

 あなたのYahoo!IDのパスワードは大丈夫だろうか? 安易なパスワードを使っていると、詐欺に利用される可能性がある。他人にはわからないパスワードに今すぐ変更しよう。

守りたい7つのポイントとは?

 警察庁が発表した「平成19年上半期のサイバー犯罪の検挙状況等について」によれば、平成19年上半期におけるオークション関連の相談件数は約7000件。史上最高だった平成17年(1年間で約1万7500件)よりは少なくなったが、今もオークション関連のトラブルは多い。

 ネットオークション最大手のYahoo!オークションでは、詐欺などのトラブルを減らすために、様々な安全対策を投入している。代金を第三者機関に預けてから決済する「エスクローサービス」、本人確認の徹底、フィッシング詐欺を防ぐ「取引ナビ」などの対策だ。


Yahoo!オークションの「ヤフオク護身術

 またYahoo!オークションでは、初心者向けにわかりやすい詐欺対策のページヤフオク護身術を作っている。ここにはオークション詐欺の実例や、詐欺にあわないための対策がまとめられている。ここに掲載されているトラブルを避けるための7つのポイントを紹介しよう(カッコ内は筆者の脚注)。

1:出品者の説明をよく読みましたか?(落札後に発送が遅れるなどの表記がないか?)

2:出品者の評価を確認しましたか?(「良い」という評価は今よりどのくらい前? 「悪い」のコメント内容は?)

3:落札後に出品者が誰であるかを確認しましたか?(住所・氏名・電話番号が書かれているか? それは本当か?)

4:相手の名前をYahoo! JAPANの検索を使って調べてみましたか?(過去にトラブルを起こしていないか?)

5:振込先がトラブル口座リストに掲載されていませんか?(トラブル口座リストで検索して確認する)

6:振込先の名称を確認しましたか?(出品者と同じ名義か? 店舗なら店舗名になっているか?)

7:ほかの落札者から評価が付いているか確認しましたか?(評価に変化はないか? 急激に「悪い」が増えているれば要注意)

 この7つのポイントは、他のオークションでも応用できるものだ。オークションを利用する場合は、しつこくこれらのポイントを確かめたい。

100%安全な対策はない。オークション参加は慎重に

 様々な対策が投入され、ユーザーの理解も進んできたが、残念ながらオークション詐欺は根絶できてない。より巧妙な手口が使われるようになったり、面倒だからと対策サービスを利用しない人がいるからだ。特にフィッシング詐欺が増えてきた現在では、完全に信用できる詐欺対策は存在しない。フィッシング詐欺でID・パスワード、メールアドレスなどを乗っ取られると、本人かどうかの確認が難しくなるからだ。

 筆者は、友人や知人に「もうオークションはやめたほうがよい」と忠告している。あまりに詐欺が多いこと、「次点詐欺」「委託詐欺」などのメールが無差別に送られていること、フィッシング詐欺の事件が起きているという理由からだ。

 オークションでは、詐欺ではないと確認するのに、面倒な手間がかかりすぎる。また詐欺でないかと不安に思いながら取引するのもイヤなものだ。

 それなら多少高くても、安心できるショップで購入したほうがいいのではないだろうか。オークションでしか入手できない物ならともかく、それ以外はオークション以外の信頼できるショップ、もしくは店頭での購入したほうがいいと思う。

 どうしてもオークションを利用したいのであれば、上記の7つのポイントを守ったうえで、最近の詐欺手口を理解して警戒する、できるだけ高額な商品は避けるといった予防策を取ろう。

http://www.yomiuri.co.jp/net/security/goshinjyutsu/20071001nt06.htm