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2007年10月01日(月) 14時21分

新進の音楽ジャンル「エモ」って?オーマイニュース

 うつや精神的病がひんぱんに話題に上る現代社会。私や身の回りでも、うつやパニック障害に苦しんでいるという話を見聞きする機会が以前より増えた気がします。

 こうした話題は日本だけではありません。統計によると、アメリカでは成人期に至るまでに20%の若者が「うつ(teenage depression)」を経験、また別の統計では8人に1人の思春期の若者がうつだとも言われています。そんな時世を反映してか、メランコリーなパンクロックのジャンル「エモ(エモーショナル・ハードコア)」がアメリカのティーネージャーの間で流行してるようです。

■ロックの典型を覆す「エモ」スタイル

 一般的に「エモ」に分類されるバンドは、Jimmy Eat WorldやFall Out Boy、日本武道館でも来日公演を行ったMy Chiemical Romanceなど。定義の幅は広いのですが、ロックミュージックでありながらも、極度に感情的で、時に自己を疑う弱々しいような切なさが共通して見られます。

 こうした音楽の商業的ヒットを経て、今や「エモ」はただの音楽ではなくファッションやスタイルをも総称するようになりました。

 ロックといえば、マッチョな男が荒れ狂うようなパフォーマンスや、金髪のお姉さんにモテモテのミュージックビデオなどがイメージされます。思い起こしてみれば、ロックバンドは男達の世界で、楽屋にはグルーピーが出待ちしているというようなシーンがかつての主流でした。

 一方、今のロック界で際立ったシーンを生んでいるエモは、マッチョどころか軟弱そうなヘアスタイルやオタクみたいなフチ眼鏡のメンバーが、縁起の悪そうな「スカル(骸骨)」のプリントされたTシャツを着、愁傷に浸っているのです。

 また、思春期のパンクは失恋ソングばかりだった気もしますが、「エモ」はまさに自己に自身を持てず、悩んでいる十代の姿が投影されており、その上そんな姿がカッコいいということになり、ティーンにウケている模様です。

■アメリカの「いま」が生み出した「エモ」

 こうした非通念的な側面こそ、「エモ」が孕んでいる新しさのひとつでもあります。女に困ることのなさそうなマッチョなロック、つまり「全ての人(men=男)は平等である」と唱える国アメリカの伝統的な「男性権威主義」や「男らしさ」ではなくそれを逸脱した、弱々しいおとこの子達を含有するのです。また、ヘテロセクシャル(異性愛)だけでなくホモセクシャルにも共有の場を与えています。youtubeでemoやgayなどとタグで検索してみてください。くだらない作品でも何万もの視聴数を獲得していることからも一目瞭然です。

 このところ商業的ヒットを重ねていたヒップホップは、「女性嫌悪」であるとバッシングを受け、その歌詞やミュージックビデオの見直しを求めるキャンペーンが起きるほどでした。超マッチョでイカツイ男を好しとするヒップホップもこれまでのロックの変遷も、結局はアメリカ社会の根源的な男性権威主義を反映したにすぎません。『007』シリーズも暴力的でマッチョな男が素敵だと言い放たんばかりです。

 こうした状況から今の流行としての「エモ」をとらえると、分け目のわからない髪型のエモ少年は、かつて多くのアメリカの母親たちが激怒したビートルズのもたらした長髪の流行とも重なるものがあるのではないでしょうか。

(記者:小池 モナ)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071001-00000012-omn-int