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2007年09月30日(日) 03時02分

犯罪被害者のPTSD改善=記憶と向き合う長時間曝露法−精神医研・飛鳥井医師時事通信

 殺人未遂や性暴力、交通事故などの被害に遭い、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱える犯罪被害者を対象に、精神科医らとの面接を通じて記憶と向き合う「長時間曝露(ばくろ)法」の治療をした結果、症状が大幅に改善したことが29日、東京都精神医学総合研究所の飛鳥井望医師の研究で分かった。
 犯罪被害者等基本計画に基づく研究で、症状の程度を数値化すると、治療後は約5分の1に低減。飛鳥井氏は「時間や費用はかかるが、効果は治療後も持続する。多くの被害者が受診できるよう、医療保険の活用など公的支援の拡充が必要だ」としている。
 PTSDは、事件、事故などの被害者が、当時の出来事を突然、思い出したり、現場に近づけなくなったりする症状。薬物療法や精神療法が有効だが、1回の面接に90分程度かかる長時間曝露法は、一般の保険診療が適用されにくい上、1回1万〜2万円の費用負担への被害者の抵抗感も強く、普及していないという。
 飛鳥井氏は文部科学省の助成を受け2005〜07年度、同法での治療を研究。20代〜50代の男女10人が治療と半年後の追跡調査を終えた。
 面接は週1回で、計10〜15回。被害者は精神科医や臨床心理士に対し、事件当時の記憶を繰り返して陳述する。話を録音して自宅でも聞くほか、乗り物や場所に近づくなどの課題に段階的に取り組み、恐怖心を和らげていく。
 飛鳥井氏によると、外出も不安だった被害者らは、当時の状況を客観的に理解できるようになるにつれ、積極的な姿勢が出てきたという。 

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070929-00000149-jij-soci