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2007年09月29日(土) 01時34分

匿名通報制度 犯罪を見て見ぬふりをせずに(9月29日付・読売社説)読売新聞

 子どもの健全育成を害する犯罪が深刻化している。警察庁が10月1日から始める匿名通報ダイヤルを、こうした犯罪を防ぐ強力な援軍としたいものだ。

 被害者の保護や事件の摘発につながる情報を提供してくれた人に、国費から情報料として最高10万円を支払う制度だ。例えば、児童買春・児童ポルノがらみの違反、風俗営業法違反や刑法の強制わいせつ罪に当たる犯罪が対象となる。女性の人身売買なども含まれる。

 匿名でも通報を受けるのは、身元を知られたくない人に配慮したためだ。

 すでに5月からは、公費懸賞金制度が始まっている。殺人などの重大事件について、有力情報の提供者に最高300万円を支払う制度だ。来春には、拳銃の情報提供者に10万円前後の報奨金を支払う制度も設けられる。今回の制度は、こうした事業の拡大の一環でもある。

 どの制度も、その存在が広く知られてこそ成果に結びつく。まず情報提供の量を増やす工夫が必要だ。

 匿名通報ダイヤルは、地域安全活動に取り組んでいる民間団体「日本ガーディアン・エンジェルス」が窓口となる。情報は警察庁に報告され、さらに都道府県警察に伝えられる。

 匿名の場合は受理番号で識別する。欧米の先進国には犯罪情報全般に懸賞金をかけている民間ボランティア団体があるが、これを参考にした。

 児童買春・児童ポルノ法違反の昨年の摘発件数は2229件で、8年前の法施行以来、最高となった。携帯電話の出会い系サイトがきっかけで、少女が性犯罪の被害者になったり暴力団とつながりを持ったりするケースも多発している。

 本来なら、異変を察知したら、謝礼の有無にかかわらず警察に通報するのが当たり前だが、現実には、見て見ぬふりをする人が増えている。被害者である子ども自身からの通報も期待しにくい。

 「警察が情報を金で買う時代」になったとの指摘もあるが、治安の改善につながることは積極的に導入すべきだ。周りに通報者がいるかもしれないという意識が広がれば、犯罪の抑止にもなる。

 電話で対応するスタッフがしっかりしていなければ機能しない。警察庁と緊密に連携し、冷静で臨機応変に受け答えできる有能なスタッフを育てていくことも大事だ。微妙な情報を扱うだけに、その管理も厳格にしなければならないし、偽情報への警戒も必要だろう。

 情報料の対象となる犯罪を、一般の人に分かりやすく示すことも大切だ。実施状況をみつつ、より信頼される制度へと育てていってもらいたい。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070928ig90.htm