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2007年09月28日(金) 12時12分

止まらない信用収縮、米CP発行残高の減少も続くロイター

 [ニューヨーク 27日 ロイター] 27日の欧米市場では、一部の欧州の銀行間貸出金利が急上昇する一方、米コマーシャルペーパー(CP)発行残高の減少が続くなど、信用収縮の継続をうかがわせる動きが重なり、世界のクレジット市場回復に対する期待感を一気にしぼませる展開が見られた。
 信用収縮の継続は、短期金融市場への大規模な資金供給を余儀なくされた欧米の中央銀行の動きによっても裏付けられている。
 米教育ローン最大手SLMコーポレーション(通称サリー・メイ)<SLM.N>の身売りをめぐる動きが信用収縮の影響を示す典型的な1例だ。プライベートエクイティと銀行で構成される投資家連合は今週、当初合意していた価格での買収を取り止め、サリー・メイの経営陣は現在、魅力の減じた提案について受け入れるかどうかの検討を強いられている。
 また最新の住宅関連の米経済指標も、リスクテーク意欲の減退と経済活動の停滞という悪循環を示している。クレジット危機は住宅ローンの焦げ付きが発端だった。現在は融資基準の厳格化を受け、もともと激しかった住宅市場の落ち込みに拍車がかかっている。
 スターリング・ナショナル・モーゲージのマイケル・ビゼノフ社長は27日発表の8月の米新築1戸建て住宅販売の減少について「春の終わりから夏の初めにかけて住宅ローン利用環境がかなり突然に変化したことを反映している可能性がある。契約締結間近、あるいは実際に契約を結んだ多くの人にとって資金調達が以前よりも難しくなった」と指摘した。
 困難な環境に直面しているのは個人ばかりではない。企業の資金調達も難しくなっていることは米連邦準備理事会(FRB)が同日発表した米CP発行残高の週間統計で明らかだ。
 26日時点のCP発行残高は前週から136億ドル減少して1兆8554億ドルとなり、2カ月前のピーク水準と比べると16.6%縮小した。
 企業はCPを日常業務の運転資金を賄う手段として利用しており、アナリストらは信用収縮が長引けば長引くほど経済全般の足を引っ張る要因になると警告する。FTNフィナンシャルの主任エコノミスト、クリス・ロウ氏は「CP市場は8月ほど急速には悪化していないが、残高が減り続けている限り、まだ安心はできない。患者の容体は回復していると言うよりも、病状が軽くなったと言う方が、より正確な表現だろう」と述べた。
 ただ、流動性回復の兆しも一部に出てきた。複数の関係筋がロイター・ローン・プライシングに明らかにしたところによると、米投資会社コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)による電子決済サービス会社ファースト・データ<FDC.N>の買収案件では、ファースト・データがタームローン130億ドルのうち94億4500万ドルを売却した。同ローンに対する需要は、この夏の信用収縮によって棚上げされていた3000億ドルを超える世界のレバレッジド・バイアウト(LBO)の資金調達を占うテストケースとして注目されていた。
 FRBは27日、4回のオペを通じて短期金融市場に合計380億ドルの資金を供給した。今回の供給額は2001年9月19日以降で最大規模となった8月10日の供給額に並ぶ水準。
 欧州中央銀行(ECB)も26日に限界貸し出しファシリティーを通じて39億ユーロ(55億ドル)を貸し出していたことが公表データで明らかになった。限界貸し出しファシリティーには主要政策金利を上回る5%の金利が適用されるが、貸出額は04年10月以来ほぼ3年ぶりの規模だった。
 また、銀行の資金需要は引き続き強い一方で貸し渋り傾向が強まっていることを反映し、27日の欧州インターバンク市場では、3カ月物ユーロのロンドン銀行間取引金利(LIBOR)が再び上昇し、ここ6年余りで最高の水準となった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070928-00000074-reu-bus_all