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2007年09月27日(木) 21時11分

父親、不信感にじませ「真実知りたい」 力士急死朝日新聞

 大相撲の序ノ口力士だった斉藤俊(たかし)さん(当時17)=しこ名・時太山、時津風部屋=がけいこ中に急死した問題で、父の正人さん(50)が27日、東京都内で記者会見した。「ビール瓶で殴った」と師匠の時津風親方が認めたときの様子などを説明しつつ、「真実を知りたい」と繰り返し訴えた。日本相撲協会は同日、理事会を開いたが、理事長や親方らの責任問題は話し合われず、協会による独自調査も行わないという。

記者会見で時折声を詰まらせて斉藤俊さんのことを話す父・正人さん=27日午後、東京都千代田区で

記者たちに囲まれながら国技館を出る時津風親方=27日午後

 俊さんの父・正人さん(50)は会見で、亡くなった直後は「通常のけいこ」と説明していた親方への不信感をにじませ、「真実を知りたい」と繰り返した。

 ■死亡直後、部屋側が「火葬」打診

 8月上旬、正人さんのもとを訪れた時津風親方は「ビール瓶で殴った」と認めた。週刊誌で暴行疑惑が報じられた直後に、「通常のけいこ」というこれまでの説明を翻し、自らの暴行について語った。「開いた口がふさがらず、次の言葉が出てこなかった」

 親方は兄弟子たちが集団で暴行したことも認めたが、自らの指示は否定したという。

 亡くなった直後に部屋側から「こちらで火葬したい」と打診されたことも明らかにした。「頭が真っ白だったが、それは困ると伝えた」。その日、運ばれてきたのは傷だらけの遺体だった。

 火葬を持ちかけたのは傷を隠す意図があったのでは、という報道陣の質問に対し、「いまとなってみれば、そうかもしれない」と応じた。

 遺体の損傷を目の当たりにし、親方の説明に納得できず、行政解剖を要請した。「何があったのかはっきりしてもらいたい。それが分からないと、(親方らの)責任についても考えられない」

 会見の最後で、「こういう事故は二度と起こらないで欲しい。うちの息子だけでたくさんです」と再発防止を訴えた。ただ、日本相撲協会からの連絡や説明はまだないという。

 ■時津風親方「お騒がせし申し訳ない」

 時津風親方はこの日午後1時すぎ、東京都墨田区内の部屋から車で両国国技館に入った。公の場に姿を見せるのは、愛知県警の調べに暴行を認めたことが明らかになってから初めてだ。

 親方は定例理事会の冒頭に「お騒がせして申し訳ない」と陳謝し、2分で退席。進退については言及しなかった。

 この後、部屋持ちの親方が集まる定例師匠会でも同様に陳謝。取り囲んだ記者たちには「みなさんにご迷惑をかけた。(遺族には)何とも言いようがない」としか話さなかった。

 理事会では、再発防止に向けて力士の指導に関する検討委員会をつくることを決めた。伊勢ノ海・生活指導部長(元関脇藤ノ川)、友綱・相撲教習所長(元関脇魁輝)ら親方8人で来週にも初会合を開く。若い力士の指導のあり方を話し合う予定だ。

 理事会は非公開で行われ、記者会見でやりとりを質問された高砂・広報部長(元大関朝潮)は「冒頭で時津風親方が謝罪した。それ以外お話しできない」として席を立った。

 出席者によると理事会では、伊勢ノ海部長から改めて事件の説明があった。理事の間からは「ここまで問題が大きくなると思わなかった」との声が漏れたが、執行部の責任を厳しく問う声はなかったという。

 斉藤さんが亡くなって3カ月。協会はこの間、当時の経緯について時津風親方から報告を受けただけ。親方への処分はなかった。

 今回の理事会終了後も北の湖理事長(元横綱)は、処分について「捜査がきっちりしたら、それなりの考えを示したい」と話すにとどまった。「捜査と食い違いがあってはいけない」と協会独自の調査も否定した。

http://www.asahi.com/national/update/0927/TKY200709270631.html