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2007年09月27日(木) 16時05分

FX取引業者で相次ぐ破産、顧客の証拠金戻らず読売新聞

 高配当をうたって、外国為替証拠金取引(FX取引)への投資を呼びかけた業者が経営破たんし、顧客が預けた証拠金が戻らないケースが相次いでいる。

 国が規制強化に乗り出した2005年7月以降、19社が次々と破産。負債額は判明した7社だけで約184億円に上るが、この大半は顧客の証拠金だ。ほとんどが運転資金などに流用されたとみられ、多くの顧客が泣き寝入りを強いられている。

 05年10月に約440人の顧客から20億円を超す資金を集めたまま破産を申し立てた「リベラインベスティメント」(東京都新宿区)の破産手続きが今月10日、終了した。東京地裁で開かれた最後の債権者集会で顧客への配当がゼロと決まると、詰めかけた高齢者らから悲鳴が上がった。

 同社は04年ごろから、訪問販売などで投資を呼びかけた。顧客の多くは高齢者で、仕組みをよく理解しないまま、老後の蓄えをつぎ込んだ人もいた。

 「必ずもうかると言われて取引を始めたが、多額の損失を被った」。FX取引を巡って、全国の消費者センターに寄せられたこんな苦情件数は02年は393件だったが、03年は1423件、04年には2910件に上った。05年7月に施行された改正金融先物取引法で業者に登録が義務付けられたが、先物取引に詳しい弁護士は「業者を登録させるルールをもっと早く作れば、被害拡大を防ぐことは可能だった」と話す。

 金融庁は同年12月までに債務超過になっていることや顧客の証拠金と会社財産を分けて保管していないことなどを理由に、54社に業務停止処分を命令。このうちリベラ社を含む19社が、処分とほぼ同時に自己破産を申し立てた。

 同社については、破産手続きの過程で、04〜05年度に顧客から集めた証拠金約28億円などを、人件費計約11億円など約19億円に上る会社運営費につぎ込んでいた実態が判明。社員の飲食費や海外への社内旅行費も含まれていた。関連会社名義の商品先物取引への投資にも回され、約5億円の損失が出た。

 顧客の深谷庄一さん(83)(東京都台東区)は05年、高校の後輩を名乗る20歳代の営業マンの訪問を何度も受け、400万円の現金と10年以上前に約3800万円で購入した株券を預けた。ほとんど配当を受けないまま、数か月後に突然、破産の知らせを受け、現金も株券も戻らなかったという。深谷さんは「孫のように感じていた営業マンに裏切られ、蓄えを失った。これが犯罪にならないのか」と憤る。

 リベラ社の社長は「運営費が高くても、それ以上の利益が出れば問題はなかった。金融庁の指導もあって、破産手続きをとったが、もっと続けたかった」と釈明する。

 破産申立時の負債総額は、19社のうち、民間の信用調査機関などの調査で判明した7社だけで計約184億円。19社の大半が破産手続きを終えているが、「預かり金の一部でも顧客に返還できたケースはまれ。行政の対応の遅れも、被害拡大の一因となった」と、別の業者の破産管財人を務めた弁護士は指摘している。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070927i309.htm