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2007年09月27日(木) 16時56分

L&G社、出資法違反の疑い 悪徳業者にだまされる人々ツカサネット新聞

2年程前に耳にしたこの会社、「2007年あたりに飛ぶ」と予測していたのだが、案の定だった。

「高額の配当や、『円天』と呼ばれる独自通貨をもらえるとうたって、全国の会員から多額の「協力金」を集めていた東京都新宿区の健康関連商品販売会社『エル・アンド・ジー』が今年2月以降、配当の支払いを中止し、各地の消費生活センターに苦情が相次いでいることがわかった」(9月23日9時19分配信 読売新聞)

私の身の回りで、この話に乗ってしまった人は5人。いずれもエビの養殖だの、牧場のオーナだの悪徳商法のカモになった前歴のある人たちだ。

全員にこの儲け話が怪しく危険であることを説明したのだが、結局聞き入れてもらえず、全員が入会してしまった。そのうちの1人は、病院代が払えないと言っていたおばあちゃんだったが、その後、行方不明になったと聞いた。説得しきれなかったことが悔やまれる。

私がこの儲け話を危険であると判断した理由を解説しよう。「1口100万円の協力金を預けて会員になれば3か月ごとに9万円の配当を支払う」「1年後の満期には元本を返金する」といった勧誘をくり返していたと新聞は報道しているが、実は2年前は「2年で3倍になる」と言って勧誘していた。この時点で「不特定多数から資金を預かることを禁じた出資法違反」だと私は判断した。

3倍になるのが2年後と言っている点も気になった。おそらくは2年後にこの会社は支払いを停止するつもりだろうと予測した。ウェブショップが始まれば、そこで更に儲けることが出来ると宣伝されていたが、ウェブショップを本格展開する時期も2年後と言われていたので、その疑いはほとんど確信になっていた。

そして、決定的だったのが経営者の経歴だった。代表取締役である「波和二」は日本で最初に設立された、米国系大手MLM企業である「APOジャパン」の最高実力者だった人物だ。わずか4年で事実上の倒産となった「APOジャパン」の被害者は25万人とも言われており、被害者高校生が自殺するなどの騒ぎでも注目された。悪徳マルチの元祖と言われている。

当時、波和二は波教とまで云われた洗脳哲学を作り上げていたが、私が見せられたL&GのDVDにも「感情操作論」なるものが収録されていた。ダウト! である。このような経歴は、ちょっと調べればすぐに分かる。そして、その事実を知ったなら、すぐにでも退会するだろうと思ったのだが…。

彼らはヤメるどころか、私をしつこく勧誘し続けた。

「この間、配当を貰ったから大丈夫」
「今は損していないから、危なくなったら考える」
「2年だけやったら良いじゃないですか!」

自分が詐欺の片棒を担ぐことになるかもしれないというのに、その事実を理解したくないのだろう。彼らは既に100万をこの会社に出資してしまっていた。前述のおばあちゃんの場合、消費者金融から借金していたからたまらない。その時点で既に被害者なのだが、彼らが被害者から抜け出すには、誰かを勧誘して被害者にしなくてはならない。追いつめられているとはいえ、それを躊躇なくやってしまう…。その姿を見て、弱い人間とは恐ろしいものだと痛感した。

彼らが、この会社を信用するという根拠は派手なイベントだった。

有名な演歌歌手を登場させて、食事を用意し、帰る時には菓子折りを持たせてくれる。こんなに金をかけてくれるんだから、だますはずがない。あんな有名人が出るのだから大丈夫だと言い張るのだが、どことなくその目には虚ろなものがあった。

現実は逆だ。悪徳商法の会社ほど派手なイベントを行う傾向がある。演歌歌手にしてみれば、ギャラさえ払ってくれれば、相手が詐欺師だろうがなんだろうが関係ないのだ。先日、業務停止処分を受けたユナイテッドパワー社にしても、カリスマコンサルタントである船井幸雄をいろんな形で担ぎ出して信用があるように装っていた。船井幸雄にしてもコンサルタントなのだ。顧問料などで儲けているだけのことだ。

表面的なことでなく、本質的なことを見極めなくては何度でもだまされる。実は、判断するために必要な材料は簡単に手に入るのだ。パンフレット、過去の新聞記事、ウェブでの評判、どこでも手に入る情報から8割以上は判断出来る。

それにしても、どうして彼らは同じ失敗をくり返し、その度に消費者金融の借金を増やしてしまうのだろう?

本当に悪いのはだます奴らだ。だが、こうした悪徳業者がちらつかせる餌に、思い切りかぶりつく被害者にはある共通点がある。

1)自分は善良で力がないと思っている
2)自分の信用を大事にするという価値観がない
3)依頼心が強く、何もしなくても儲かるという話に弱い
4)権威やブランド、派手な演出に弱い
5)自分の間違いを認めることができず、言い訳ばかりする

商品だろうが金儲けの方法だろうが、それを提供する側になるということは、そこに責任が発生することを意味する。だが、自分の欲望を飼いならすことも出来ず、自分は善良で罪がないからと、周りのせいにするような人は簡単に操られ、しかも自分の責任に関しては無自覚なまま、被害者の立場に収まろうとする。

私は「ビジネスチャンス」の話が持ち込まれたら、一通り耳を傾ける。うまい話は全て信じないという姿勢ではチャンスを掴み損ねるし、うっかり洗脳されてしまうこともあるからだ。チャンスを査定する判断力を持つことが、身を守る唯一の方法であり、その判断を間違えた場合にも自分の責任を自覚せざるを得ないので、その経験を将来に活かすことが出来る。

悪徳業者に操られる人には、自分のことを「善良で欲がない人間」だと思っている人が多いが、実は自分の欲を認めたくないだけだったりする。自分の欲を自覚しなければ、自分に責任があるとも感じないものだ。そういう無自覚さが、自分自身のみならず周囲の人に被害を広げる元になっているのだ。無欲なふりをして無責任を通す「被害者」には、進歩がない。

「花田さん、今度こそすごい投資だよ! 何もしなくても増えるんだよ!」なんて電話が今日もかかってきた。既に調べのついている悪徳商法の話だった。彼からはこれで3度目の無責任勧誘だ。着信拒否だな、こりゃ。何度アドバイスしてもムダってのは悲しいです。脱力。

(記者:花田 昌幸)

■関連サイト
独自通貨「円天」の健康商品会社、会員5万人への配当停止(9月23日9時19分配信 読売新聞)

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