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2007年09月26日(水) 18時34分

ペッパーランチ事件に懲役12年──求刑上回るオーマイニュース

 ステーキチェーン「ペッパーランチ」心斎橋店で、女性客に睡眠薬を飲ませて拉致し、乱暴をしたとして強盗強姦・逮捕監禁の罪に問われている同店元店長の北山大輔被告(25)と元店員・三宅正信被告(25)に対する判決公判が26日、大阪地裁で開かれた。杉田宗久裁判長は北山被告に懲役12年(求刑懲役10年)、三宅被告に同10年(同10年)の実刑判決を言い渡した。

 北山被告には求刑よりも、重い判決。犯行に使われた拘束帯やチェーン、バイブレーターなどの道具は没収された。

 判決によると、北山被告は今年3月に同店を開店、美人客の来店が多いことから、同僚で友人の三宅被告と、「きれいな子とやりたいな。襲わないと無理かな」などと話していた。三宅被告も「やってもいいなあ」と応じたため、勤務時間中に犯行計画を練るようになった。

 その後、携帯電話の通販サイトからスタンガンを購入し、車で通行中の女性を襲おうとしたが、適当な女性がおらず断念。北山被告が、閉店間際に来店した女性客を襲うことを思いつき、三宅被告もあっさり同意したため、襲ったあとはガレージに監禁するなどの計画ができあがり、拘束帯やバイブレーター、コンドーム、精力強化剤などを次々に購入していった。

 犯行が行われたのは5月9日深夜。1人で来店した女性が食事中に、三宅被告が店のシャッターを下ろし、北山被告が女性の首後部にスタンガンを当てて放電、女性の自由を奪った。さらに女性の現金5万5000円を強奪、睡眠薬を飲ませた。

 その後、午前5時ごろに女性を連れて大阪府泉佐野市内にあるガレージに移動、女性をチェーンなどで拘束したあと、数回にわたって乱暴した。両被告が立ち去ったあと、女性が自力で脱出するまで、拉致監禁時間は9時間にわたった。


 杉田裁判長は判決理由で、

 「飲食店のスタッフが食事中の女性を襲うという、前代未聞の衝撃的な事件。それも身勝手極まりない犯行動機であり、被害者女性に対する尊厳など一切見られない。何の落ち度もないのに想像だにしない犯行に巻き込まれた被害者女性の肉体的苦痛、恐怖、不安、絶望感は計り知れない」

 「良質なサービスを提供する場にあり、場合によっては保護することさえある飲食店スタッフの立場で、あろうことかその立場を利用し、1人で来店した女性を襲う。この事件が社会に与えた不安と影響は大きい」

と断罪。

 三宅被告が公判で促されるまで被害者に謝罪していなかったこと、北山被告は謝罪の手紙などを送っているにも関わらず、法廷で不合理な証言をしたことも指摘され、反省が足りないと受け止められたことが示唆された。

 検察が両被告に同等の求刑をしたにもかかわらず、北山被告にそれより重い12年の実刑を科したことについては、

 「北山被告は、犯行を発案・計画し、道具の準備をほとんど行い、計画実行も一貫して主導してきたことから、事件の主犯格であることは明らか」

 「三宅被告は自己の責任に真摯(しんし)に向かい合っているのか疑わしいところがあり、かつ陵辱行為には積極的に関与しているが、計画作成に対しては1段階下げて評価するのが妥当」

と説明した。

 また、個人による強姦罪(2年以上15年以下)としてはかなり厳しい量刑としたことについては、2005年の刑法改正により集団強姦罪では4年以上20年以下の懲役刑が科されるなど、強姦罪に厳しくあたる流れを含み、「主犯たる北山被告に対する求刑はいささか軽い」と判断したと述べた。

  ◇

 働く女性では、昼食でも夕食でも1人で外で済ませる機会が多い。そんな中で、安全と思いがちな飲食店の従業員がその立場を悪用し、ただ、「きれいな子とやりたい」というだけで周到な準備をはかって犯行に及んだ。あまりにも子どもっぽく、稚拙で、それだけに残酷な行為に下された罰は、大方の想像より重かったといえるだろう。

 同公判では、初公判以降徐々に傍聴希望者が増え、この日は24の傍聴席の抽選に92人が列を作っていた。

(記者:軸丸 靖子)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070926-00000003-omn-soci