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2007年09月24日(月) 14時14分

緊急地震速報、民放は「警報」化に不満 パニック心配朝日新聞

 地震の初期微動をとらえ、大きな揺れが来る前に知らせるという世界にも例がない緊急地震速報の提供開始が10月1日に迫るなか、民間放送局に不満が広がっている。直前になって気象庁が突然、緊急地震速報の「警報」化を検討し始めたからだ。「的確に提供してもらうため」とする同庁に対し、「パニックを引き起こす恐れもあるのに、放送しないという選択肢がなくなってしまう」と民放側は反発する。

緊急地震速報の仕組み

 「本来なら10月1日にめでたくスタートだったんですが、今の状況はやや流動的になっている」

 20日の日本民間放送連盟(民放連)の定例会見。広瀬道貞会長は、緊急地震速報について問われ、そう答えた。気象業務法の「警報」にしたいという意向を気象庁から知らされたからだ。

 現状では、気象庁の出す情報の一つで、放送するかどうかは放送局が自由に決められる。ところが、気象庁は、「予報・警報」に位置づけ、指定公共機関のNHKに放送を義務づける法改正の原案をまとめた。検討段階として詳しい内容は明らかにしていない。

 民放は同法の指定公共機関には入っていないが、広瀬会長は「台風の予報と同じように早急に放送しなければならなくなるのではないか。そういう前提でやっていいのか」と疑問を投げかけた。

 全国のテレビ・ラジオ200社が加盟する民放連は今年2月、緊急地震速報の認知度が低いことなどを理由に、「パニックなどの二次的被害が起こる可能性が高く、放送実施に踏みきれない」との意見書を気象庁に出した。放送用のシステムの技術開発や維持に費用がかかることもあり、各局は導入に慎重にならざるをえなかった。

 それでも8月末、新潟県中越沖地震でのモデル地域の取り組みなどを踏まえ、「一定の期待が感じられ、放送する効果も見えつつある」と前向きの評価を出し、テレビではNHKが放送を始める10月1日から順次流す準備を各局が進めていた。

 情報が流れることによって二次的被害が出ることへの懸念は、加盟社の半分を占めるラジオ局に特に根強い。前の車のドライバーがラジオで地震発生を知り急ブレーキを踏み、ラジオを聞いていない後ろの車が追突するような事故が起きかねないからだ。「放送したラジオ局が損害賠償請求をされないとも限らない」との不安が残る。

 文化放送やエフエム東京など在京の民放ラジオ6社は19日、放送開始を来年4月と発表した。民放連が7月に独自に行った調査で認知度は29%。テレビと違って「ながら運転」の多いラジオでは「なお半年間の周知期間が必要」と判断した。

 会見したニッポン放送の田中厳美編成局長は「使い様では減災に有効な情報。ただ、国には疑問の念を禁じえない。NHK、民放に依存している。(国が)この情報をもっと深く理解し、熟成して有効に作られてきたかというと残念な気持ちがある」と周知が進まない現状に不満を見せた。

 気象庁の平木哲長官は21日の定例会見で、「情報を的確に提供して、活用していただくために、様々なハードルを乗り越えてきた。それを永続的に維持できるような仕組みはどうすればいいのかと検討した結果、現在になった」と法制化に理解を求めた。

http://www.asahi.com/national/update/0922/TKY200709220167.html