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2007年09月23日(日) 10時32分

教師がいじめ目撃 「大丈夫」言われ調査せず 高3自殺朝日新聞

 神戸市須磨区の私立高校で飛び降り自殺した3年の男子生徒(当時18)が同級生らから現金を要求されていた事件で、昨年秋ごろ、生徒の机の上に紙粘土が置かれる嫌がらせを担任の教諭が目撃していたことが22日、わかった。「大丈夫」と言う生徒の言葉に、それ以上の調査をしなかったという。しかしこの時期に、同級生らは「うそ1回につき罰金1万円」という罰ゲームを生徒と取り決め、嫌がらせを加速させていたとされる。

 同校の調査などによると、自殺した生徒は2年生の時の2学期、恐喝未遂容疑で逮捕された少年(17)を含む同級生計3人から、教室の机やかばんの中などに紙粘土を数回入れられた。生徒が紙粘土を「気持ちが悪い」と避けていたことから、嫌がらせをしたらしい。

 担任教諭が、机の上に紙粘土の塊が置かれているのを発見。生徒に声をかけたが、「大丈夫です」と言われたため、ほかの生徒らに注意しなかったという。教諭は少年の逮捕後、学校長らにこの事実を初めて報告した。学校長は「信頼関係があれば、(生徒からのいじめの)サインを見落とさずにすんだのかもしれない」と釈明した。

 また、同校は生徒が自殺した7月3日以降、同級生約70人を対象に最初の聞き取り調査をした。この時点では、教諭から紙粘土の嫌がらせの報告を受けておらず、いじめの有無について質問していなかったという。学校側は生徒が成績に悩んでいたと判断。「いじめの調査よりも、残った生徒の心のケアを優先させた」という。

 今月17日、少年が逮捕されて改めて同級生らにアンケートや聞き取り調査を実施。21日の記者会見で、初めていじめの事実を明らかにした。

 この2回目の調査で、自殺した生徒が服を脱がされる様子などの写真や動画が掲載されたホームページ(HP)を、紙粘土の嫌がらせや現金の要求をしていた同級生の1人が作っていたことがわかった。この同級生は「生徒に頼まれた」と釈明。学校側は事実上、同級生がHPを管理・運営していたとみているが、だれが写真などを投稿したかは不明としている。

 事件とは関係のない同級生の保護者によると、HPには当時、生徒が交際していた少女への中傷も書き込まれており、HPが閉鎖された時、「2人で泣いて喜んでいた」という。

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 自殺した生徒の母親が22日、朝日新聞の取材に初めて応じ、「何があったのか、きちんと学校に聞きたい」と話した。同校は21日、いじめがあったと認める学内の調査結果を公表したが、遺族に対して事前に連絡や説明をしていなかった。遺族は学校に抗議したという。

 生徒の母親は22日夕、神戸市内の自宅でインターホン越しに、「調査結果の内容はまだ聞いていない。今日(22日)の午前中に学校から『説明させてもらいたい』という電話があっただけだ。何があったのかをきちんと知りたい」と淡々と話した。

 同校はこれまで、月命日などに数回、校長や担任教諭が遺族宅を訪れたが、いじめについての言及はなかったという。少年が逮捕されてから、訪問は途絶えている。学校長は「電話で伝えることではない。いま自宅を訪ねると、(マスコミの目に触れ)混乱すると思った。配慮が欠けて申し訳ない。今後、場所や時期を打ち合わせ、丁寧に説明させて頂きたい」と話している。

http://www.asahi.com/national/update/0922/OSK200709220093.html