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2007年09月21日(金) 03時04分

<ビラ配布>TDR玄関駅で監視、団体名など記録…浦安市毎日新聞

 千葉県浦安市が警備会社に委託し、東京ディズニーリゾート(TDR)の玄関口となっているJR京葉線舞浜駅と隣接の新浦安駅前で、ビラやティッシュ配布をしている団体の名前などを記録していることが分かった。市側は「(両駅前は)『市の顔』ともいえ、整然とした状態を保ちたい」と理由を説明するが、街頭活動を規制する市条例などはなく、「表現の自由やプライバシー権の侵害だ」「行き過ぎた住民監視では」という声が上がっている。
 両駅周辺は「中町」と呼ばれる新興埋め立て地で、TDR客目当てのホテルなどがひしめいている。市道路管理課によると、京葉線開通の88年12月から警備会社に委託。警備員各1人が両駅周辺の駅前広場やロータリー、通路などの市有地で連日、午後1時半〜同8時、ビラやチラシ、ティッシュ配布などを監視している。
 今年3月までは「道路上の不法占用等に対する撤去指導等」を委託。新浦安駅前で署名集めを中止させられた市内の会社員、松下礼良さん(30)からの抗議などで、4月からは「目視による状況確認にとどめ、その内容を日誌に記入する」と一部を変更したが、毎日新聞が入手した資料によると、報告書にはビラ配布の人数や時間などが詳細に記載され、黒塗りした個人名とみられる部分もあった。
 また、今年度の委託料は537万円だが、市内でも人出が多い東京メトロ東西線浦安駅周辺ではこうした措置を取っておらず、新浦安駅前で演奏していたストリートミュージシャンが警備員に道路使用許可証の提示を求められ、無いことを伝えたところ、「浦安駅でやれ」と言われて駅前交番に連れて行かれたこともあったという。
 松下さんは「報告書作成は住民監視。憲法で保障された表現の自由やプライバシー権などを侵害する行為だ。秩序維持のためなら権利を踏みにじってもいいのか」と憤る。また、浦安駅近くの自営業、石井清さん(63)は「なぜ中町だけ税金で警備員を置くのか」と疑問を投げかける。
 こうした声に対し、市道路管理課の杉山成彦課長は「報告書の情報を何かに使うことはない。公共の福祉のために、表現の自由が一定程度制限されることはやむを得ない。浦安駅前には交番があり、警備員は必要ない」と話している。【袴田貴行】
 ◇早稲田大学法学部の水島朝穂教授(憲法学・法政策論)の話  行政が税金を使って過剰にサービスしており、表現の自由を失った萎縮(いしゅく)した市民社会を作るおそれがある。また、東西線の駅では行っていないところに、行政のダブルスタンダードも見え隠れしている。警備報告書の情報がもし公安警察に渡ったりすれば大問題で、民主主義社会の根底が揺らいでくる。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070921-00000017-mai-soci