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2007年09月20日(木) 10時25分

埼玉・千葉の不正口座事件 背後に国際詐欺団朝日新聞

 海外の犯罪収益の資金洗浄(マネーロンダリング)に使うため、預金口座を不正に取得したとされる詐欺事件で、問題口座を経由したカネは、有名な国際詐欺事件「419事件」の被害金とみられることが分かった。海外で詐取された巨額の資金が国内で資金洗浄された構図だ。口座を不正開設したとして、埼玉、千葉両県警に摘発されたグループの背後には、世界で暗躍する詐欺集団が存在する疑いが強まった。

 摘発された国内グループはナイジェリア人らによる2組織で、互いに関連があることも判明。国内の口座が国際詐欺と資金洗浄に同時に悪用されたとみて、両県警は組織犯罪処罰法での立件も視野に入れている。

 調べでは、国内の2グループは04年末以降、東京、千葉、埼玉の都銀や地銀、信用組合に本人名義や架空の会社名義で次々と口座を開設したとされる。総数は約140で、米国、カナダ、英国、ドイツ、豪州、スイスから約20億円が振り込まれた。一度に6000万円が送金されていた例もあったという。

 多額送金について、米連邦捜査局(FBI)を通じて調べるなどしたところ、遺産相続にまつわる弁護士費用名目でだまされて送金された分などと判明。それらの振り込め詐欺的な手口から、「419事件」の被害と判断したという。

 両グループとも、海外から振り込みがあるたびに銀行やコンビニエンスストアなどで即座に出金したうえ、米国やカナダ、英国、中国にある別口座に送金。米国やカナダなどの特定の電話と何度も通話しており、詐欺集団からの連絡を受けて現金を引き出していたとみられている。

 捜査は05年春、米国の金融機関が「詐欺事件に関与している疑いがある」として、埼玉県内の口座凍結を求めてきたのがきっかけ。昨年11月には、南アフリカの石油会社側から千葉県警に「詐欺の被害に遭いそうになった。振込先に指定された口座が千葉にある」と連絡があったという。

 それぞれの捜査線上に浮かんだのが、ナイジェリア国籍のアサボー・フェリックス・スティーブ容疑者(40)=埼玉県警が詐欺容疑で逮捕=と、昨年に日本国籍を取得した同国出身の野口クリストファーアリリ容疑者(39)=千葉県警が同容疑で逮捕=だった。

 2容疑者は、母国でも同じ地域の出身で、東京都豊島区内の同じ旅行会社の役員。互いに携帯電話で連絡を取り合う仲だったという。両グループの手口が酷似していることなどから、両県警は同一の詐欺集団の指示を受けていたとみている。

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 〈419事件〉当初はナイジェリアを中心としたアフリカ地域で多発した詐欺で、同国刑法419条に抵触するため通称「419事件」と呼ばれる。被害は80年代に欧米に、その後に日本にも上陸。最近は世界中に広がっている。

 典型的な手口は、電子メールなどで、マネーロンダリングや極秘取引などを持ちかけ、手数料や代金を海外の指定口座に振り込ませた後、連絡を絶つ。勧誘メールの発信源は広域化している。

http://www.asahi.com/national/update/0920/TKY200709190403.html