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2007年09月20日(木) 00時00分

ソースネクスト社長に「更新料ZERO戦略」を聞く読売新聞


ソフト販売の新基軸を打ち出した松田憲幸社長

 ソースネクストは9月7日、更新料無料のはがき作成ソフト「筆王ZERO(ゼロ)」を発売した。更新料無料のソフト販売は、最初の「ウイルスセキュリティZERO」から3本目となる。1980円のソフト販売本格化から約4年、新たな戦略の狙いを松田憲幸社長に聞いた。

−−更新料無料のソフトを販売する理由は

 ソフトを買ったにもかかわらず、毎年更新料を払うのは、ユーザーにとって煩わしいだろうという考えからスタートしました。一見、ソフト業界としては奇抜な発想と思われるかもしれませんが、そもそも、パソコンソフト以外の製品では、更新料という制度そのものが一般的ではありません。今回の戦略は、ごく普通の販売方法をパソコンソフトに当てはめただけです。

−−昨年初めて発売した「ウイルスセキュリティZERO」の売り上げが好調のようだ

 価格はもちろんですが、更新するための手続きが必要ないことも理由の一つだと思います。無料ソフトであっても、毎年手続きが必要なのが嫌だ、というユーザーは多いのではないでしょうか。

−−更新料無料では、次バージョンの販売数が減るのではないか

 あまり減らないと見込んでいます。例えば、「筆王ZERO」は昨年、新規が約30万本、アップグレード版が約15万本売れました。一方、わが社調べで、年賀状ソフトを付録にしている雑誌の年間販売数は420万冊でした。45万本のうちの15万本と考えると、更新するユーザーの割合は高いのですが、市場全体に占める割合はとても小さいことになります。更新料無料化で15万本マイナスでも、この雑誌購買層を取り込めば、販売数はもっと伸びると見ています。

価格設定の妙

−−1980円シリーズに比べて、更新料無料ソフトの価格が高いと考えるユーザーもいるのでは

 常に、価格と価値のバランスを考えて価格設定をしています。ソフトに価格に見合った価値がなければ、商売は成り立ちません。「筆王ZERO」でいえば、価格は4980円ですが、更新料は、ビスタのホームベーシックなど3種類の場合、2015年まで無料です。つまり、毎年1000円前後の雑誌を買うよりも、「筆王ZERO」を今から15年まで使えば、毎年600円程度の勘定になる。ユーザーには納得してもらえる価格だと思っています。

−−こうした価格戦略はどのように思いつくのか

 現在のパソコンソフト販売方法や価格を変えなければ、今後の販売促進にはつながらないと考えています。ソフトの販売では、他製品と比べて独特の常識がまかり通っているのではないでしょうか。例えば、パッケージが無駄に大きかったり、毎年のバージョンアップが果たして本当に必要なのか、などといった疑問もあります。以前は、ごく一部のユーザーがパソコンソフトを利用していましたが、今は違います。ソフト販売にも一般常識を当てはめなくてはならないです。パソコンソフトのクオリティーを上げるためにも、まずはユーザーに合った価格や販売方法を導入し、この普及に努めなければならないと考えています。(聞き手=編集部・笠原大輔/2007年8月24日発売「YOMIURI PC」2007年10月号から)

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20070919nt13.htm