記事登録
2007年09月17日(月) 06時12分

奈良・放火殺人少年の調書引用本 図書館が閲覧中止河北新報

 奈良県田原本町の医師宅放火殺人事件で中等少年院送致となった長男(17)らの供述調書を引用した単行本について、京都府や山形県などの一部の図書館が閲覧中止などの措置を取ったことが16日、分かった。

 単行本は、フリージャーナリスト草薙厚子さんが5月に出版した「僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)で、供述調書や精神鑑定書の内容が記述されている。

 奈良地検が14日に長男を鑑定した精神科医が草薙さんに調書の写しを渡したとして秘密漏示容疑で精神科医や草薙さんの自宅などを捜索した。

 京都府亀岡市立図書館は、7月に東京法務局が「プライバシーを侵害し少年法の趣旨に反する」として、講談社と草薙さんに増刷中止を求める勧告をしたため、閲覧と貸し出しをしていない。

 亀岡市立図書館は「勧告が出た際、まだ購入した本を書棚に出していなかったので、勧告の趣旨を考慮して判断した」と説明する。

 山形県河北町立中央図書館も6月から書棚に並べず、貸し出しをやめており、同館の理事(59)は「取材の違法性が取り上げられており、理事などが話し合った結果、当面貸し出しなどを控えている」と話している。

 栃木県の佐野市立図書館は9月15日午後に書棚から撤去したという。
 ほかに岐阜、愛媛、福岡、佐賀などの県立図書館が貸し出しや閲覧の是非について「今後対応を検討する」としている。

 過去に図書館が閲覧中止にしたケースとしては、神戸連続児童殺傷事件の加害少年の顔写真を掲載した新潮社の写真週刊誌「フォーカス」と「週刊新潮」などがある。

<表現のタブー拡大/桂敬一・立正大講師(ジャーナリズム論)の話>
 本来、表現の自由や知る権利に貢献すべき図書館が、捜査当局などの動きに呼応して閲覧中止の判断をするのは問題だ。倫理の問題については主体的な判断が必要なのに安易に国家の立場に同調すれば、言論や表現のタブーが芋づる式に拡大する恐れもあり危険だ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070917-00000005-khk-l06