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2007年09月16日(日) 23時14分

<自民総裁選>「アキバ」VS「脱劇場」 舌戦も本格化毎日新聞

 「アキバ発の総理大臣を誕生させよう!」
 幹事長・麻生太郎陣営の推薦人の一人、衆院議員・西川京子が叫んだ。1000人近い若者たちから大きな歓声。麻生はもみくちゃになりながら、一人一人と握手した。
 16日午後7時すぎ、東京・秋葉原のJR秋葉原駅西口。麻生人気の源流ともいえるサブカルチャーの発信地・アキバ(秋葉原)で、麻生は上機嫌に演説した。
 「永田町ではいじめられっ子だがアキバに来たらそうでもない。皆さんに癒やしてほしい」
 国会議員の数で劣勢の麻生は、国民的人気を盛り上げることで大逆転を狙う。この日午後2時から東京・永田町の自民党本部で開かれた2候補の立会演説会では、こんなセリフも飛び出した。「後世の歴史家は『古い自民党と、小泉改革以来の新しい自民党の再試合だった』と記すに違いない」
 派閥政治を壊した前首相・小泉純一郎の路線踏襲宣言と、派閥が右ならえで元官房長官・福田康夫支援に走ったことへの皮肉だ。麻生は「あわててまとめた多数派は、成立のその瞬間から瓦解の方向に動き出す」とも付け加えた。あからさまな挑戦状だった。
 午後4時から東京・渋谷のハチ公前であった2候補街頭演説でも、若者から「ア・ソ・オ!」の掛け声が飛んだ。
 麻生陣営の一人は満足そうに言った。「これからグングン行きますよ。(01年総裁選で橋本龍太郎氏に圧勝した)小泉さんの時と同じにもっていきたい。一般国民の人気で追い抜けば、1、2年生議員がパタパタこっちに転がってくる」
   ◇   ◇
 「実直な語りで、落ち着いていた。だいぶ世の中が、落ち着きを失っているんで、落ち着いていていいなあ、と」(元幹事長・加藤紘一)
 「バランス感覚とか、落ち着きとか。ちょっとここんとこ、劇場型の政治が続いていたので、腰を落ち着けて、じっくり考えよう、という雰囲気はありますね」(厚生労働相・舛添要一)
 党本部の立会演説会終了後、福田を支持する国会議員らの口から、同じような感想が漏れた。メリハリのきいた演説で福田との対比を際立たせた麻生に対し、福田は地味ながら丁寧な語り口で、格差是正や共生、環境、ストック型社会の形成など政策を訴えた。
 ただ一つ、麻生に対する福田の対抗心が垣間見えたのは、首相・安倍晋三の投げ出し辞任を論評した次の発言だ。
 「健康問題ということならこれ以上のことを言うのも何だが、参院選で大敗し、そういうことの集積の結果、今があるのだと思っている」
 安倍を外相・幹事長として支え、惨敗後も続投を進言し、結局、さらしものにしたのは誰か。福田は、そう言いたかったのかもしれない。
 福田陣営の衆院議員・笹川尭は「今の派閥は寄り合い所帯だから、決して派閥の人数を足した数に(得票数は)なりません。それだけは申し上げておく」と言った。派閥の談合ではない、政策や人柄で福田を勝利させる——。麻生の「談合」批判に、福田陣営も神経をとがらせている。
 福田に集まった国会議員たちを「瓦解する多数派」と言った麻生の発言に対し、福田支持派の中には「イヤミに聞こえる。あれは余分だったのではないか」と嫌悪感を示す声もある。告示を終え、舌戦本格化の総裁選。双方の感情が、次第にヒートアップしてきた。(敬称略)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070916-00000068-mai-pol