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2007年09月14日(金) 16時37分

高1放火殺人 調書出版で強制捜査 奈良地検、漏洩容疑の鑑定医を聴取産経新聞

 奈良県田原本町で平成18年6月、医師(48)宅が全焼し母子3人が死亡した事件を題材にした書籍に、殺人などの非行事実で中等少年院送致になった長男(17)らの供述調書が引用されていた問題で、奈良地検は14日、調書の内容などを著者のフリージャーナリストで、元法務省東京少年鑑別所法務教官の草薙厚子さん側に漏らしたとして、秘密漏示(ろうじ)容疑で、長男の精神鑑定を担当した京都市内の精神科医宅や勤務先病院、東京都内の草薙さんの事務所などを家宅捜索、この精神科医の聴取を始めた。

 問題となった書籍は、草薙さんが今年5月、講談社から出版した「僕はパパを殺すことに決めた」。同容疑での強制捜査は異例で「言論の自由」などとの関係をめぐって論議を呼びそうだ。

 調べなどによると、精神科医は、昨年8月に奈良家裁に選任され、当時高校1年だった長男の少年審判に際して長男の精神鑑定を担当。その後、草薙さん側に、事件の調書の写しを渡した疑いが持たれている。

 秘密漏示罪では、医師や弁護士らが正当な理由なく業務上知り得た秘密の漏洩(ろうえい)を禁じている。父親の医師らが著者や鑑定医を告訴していた。

 同書では、帯に「3000枚の捜査資料に綴(つづ)られた悲しき少年の肉声を公開!」と記し、「少年の供述調書より」「父親の供述調書より」として調書の内容を詳細に記述。精神鑑定書の内容や、非公開で行われた少年審判でのやりとりも引用されている。

 これに対し、長勢甚遠法相(当時)は6月、「司法秩序を乱し、少年法の趣旨に反する」と批判し、調書の流出元の調査を示唆。奈良家裁も「少年審判の信頼を著しく損ねるもので誠に遺憾」とし、講談社と草薙さんに抗議文を送った。

 また、東京法務局は7月、「報道・出版の自由として許容される限度を明らかに超えている」とし、少年法の趣旨に反するとして同社と草薙さんに再発防止を求める勧告を行っていた。

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