記事登録
2007年09月13日(木) 00時00分

サイボウズ、営業支援システムに新規参入読売新聞

営業支援システムで日米激突

サイボウズ ドットセールスの活動報告画面

 企業の営業活動を効率化するITシステムとして、今後急速な普及が見込まれる「SFA」(Sales Force Automation=営業支援システム)。営業マン一人ひとりのIT武装を促進する有望市場を巡って、にわかに熱いバトルが繰り広げられている。

 先行するセールスフォース・ドットコム、ソフトブレーンといった有力ベンダーに、グループウエアで急成長してきたサイボウズが真っ向から戦いを挑んだからだ。果たしてその行方やいかに——。

 サイボウズ(本社・東京)は、企業内の情報共有を図るグループウエア市場で、国内トップレベルのシェアを占める。同社が7月23日、SFA製品「サイボウズ ドットセールス」(以下、ドットセールス)を発売、SFA市場に新規参入した。

 SFAとは、企業の営業活動を効率化するITシステムのことである。営業のコンタクト履歴や商談の進捗状況、営業スケジュール、顧客情報などを蓄積でき、案件成立の見込みなどを営業部内で共有することが可能になる。

 日本では10年ほど前から大手企業を中心に使われ始めたが、企業全体の導入率はまだ1割程度と見られている。サイボウズではその理由を、「従来のSFAは米国の営業スタイルに基づいて作られており、日本に合わない」と説明する。同時に、「従来製品の多くが、導入時に営業プロセスを改善するためのコンサルティングを必要とすることがハードルを高くしている」ともいう。

 そこでサイボウズは、コンサルティングを必要とせず、手軽に導入できるようにすることをコンセプトとしたドットセールスを開発した。機能としては、日常の得意先回りがメーンで、特定の顧客と長く付き合う日本型の営業スタイルに合わせ、営業活動の内容や課題などを報告するための「活動報告機能」や、顧客情報・会社情報・事業所情報などを登録するための「顧客管理機能」に重点を置いた。

営業マンが個々にIT武装

 活動報告機能では、上司や同僚からのコメントを書き込むフォロー欄があり、これを情報共有やコーチングに活用できる。顧客管理機能では、顧客情報にこの活動報告情報を関連付けて管理するので、情報を再利用しやすくなる。例えば、担当引き継ぎの際でも、新たに担当する顧客について前任者の対応履歴を容易に把握でき、商談を円滑に継続できるとしている。

 ただし、機能は必要なものだけに絞り込み、操作性も使いやすさで定評のある同社のグループウエアをベースに開発している。パソコン操作に不慣れなユーザーでも簡単に使いこなせるようにしたのがミソだ。しかも、価格は競合製品の半額以下に抑えた。

 有力な販売パートナーも「グループウエア分野では高い導入実績と顧客満足度で定評のあるサイボウズブランドなので、誰でも使えるSFAとして、日本のSFA市場の底辺を拡大し活性化させてほしい」(大塚商会)と期待を寄せている。

 SFAは、いわば営業マン一人ひとりのIT武装を促進するツールである。それだけに潜在的な市場規模は非常に大きいと見られている。この有望市場に参入したサイボウズは、先行するセールスフォース・ドットコム、ソフトブレーンといった有力ベンダーの売れ筋製品に真っ向から戦いを挑んだ格好となる。

 サイボウズは、グループウエア市場での“巨人”であるIBMやマイクロソフトに立ち向かってシェアを伸ばしてきた実績があるだけに、激しいバトルは望むところか。SFAをうまく使いこなせば、企業のIT化は質的に大きく前進する可能性が高い。まずはサイボウズの参戦がその大きな弾みとなるかどうか、大いに注目したい。(フリージャーナリスト・松岡功/2007年8月24日発売「YOMIURI PC」2007年10月号から)

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20070911nt15.htm