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2007年09月10日(月) 16時09分

金城氏、軍強制を証言へ 「集団自決」訴訟琉球新報

 沖縄戦中、渡嘉敷・座間味両島で起きた「集団自決」(強制集団死)をめぐり、岩波新書「沖縄ノート」などで日本軍の隊長命令だったと記述され名誉を傷つけられたとして、戦隊長だった梅澤裕氏(90)らが岩波書店と作家の大江健三郎氏に出版差し止めなどを求めている訴訟で、大阪地裁(深見敏正裁判長)は10日午後、福岡高裁那覇支部で所在尋問(出張法廷)を開始した。
渡嘉敷島の「集団自決」の当事者だった金城重明沖縄キリスト教短期大学名誉教授(78)が被告・岩波側の証人として出廷した。
 金城氏は10日午後1時、裁判所前で開かれていた事前集会に到着。県内外から集まった支援者らの拍手に見送られ、やや緊張した面持ちで弁護団とともに裁判所に入った。法廷は非公開。金城氏は「集団自決」への軍の強制・関与や背景などを証言したとみられる。
 渡嘉敷島では米軍上陸翌日の1945年3月28日に「集団自決」が起き、住民329人が命を落とした。当時16歳だった金城氏も母や妹、弟を手にかけた。
 原告の元戦隊長側が、隊長命令の有無だけを争点とし「命令は出していない」「集団自決は住民の自然な発意」などと主張しているのに対し、金城氏は、軍の強制・関与なしには起こり得なかった「集団自決」の実相を自らの体験に基づき具体的に証言したとみられる。
 高校の歴史教科書から「集団自決」に対する日本軍の強制の記述を修正・削除させた文部科学省の3月の教科書検定が、原告の陳述書を一方的に検定意見の根拠とするなど、訴訟は沖縄戦の史実をゆがめようとする動きに大きな影響を与えている。沖縄現地に赴いた裁判官が体験者の言葉をどう受け止め、判決に反映させるのか。金城氏の出廷に関心が高まっている。
 事前集会には、県内のほか首都圏や大阪からも岩波側の支援者らが駆け付けた。10日午後4時半からは金城氏や弁護団による報告集会が那覇市の八汐荘で開かれる。
 金城氏が「集団自決」体験者として証言台に立つのは、88年の第三次家永教科書訴訟の沖縄出張法廷以来、19年ぶり。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070910-00000000-ryu-oki