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2007年09月09日(日) 10時02分

爆発物製造の被告、原料は薬局から 業者、薄い危機意識朝日新聞

 TATPと呼ばれる爆発物を製造、所持したとして爆発物取締罰則違反で起訴された東京都東久留米市、無職寺沢善博被告(38)が「テロ関連のサイトで作り方を知った。原料は薬局などで普通に買えた」と供述していることがわかった。政府はテロ防止を目的に爆発物の原料になる薬品の管理強化を業者に求めているが、危機意識が浸透していないのが現状だ。

 数リットルの過酸化水素水、塩酸、塗料溶剤のアセトン——。6月に逮捕された寺沢被告の自宅には爆発物の原料になる薬品が無造作に転がっていた。購入先の薬局や溶剤販売業者の多くは捜査員から「原料になる」と聞かされ、驚いていたという。

 TATPは有機過酸化物である過酸化アセトンの一種。TNT火薬と同程度の強い爆発力を持ち、わずかな衝撃で爆発する。同じ有機過酸化物の爆発物にはHMTDなどがあり、05年のロンドン同時爆破テロなど近年のテロで使用が目立つ。

 国内では02年ごろからこれらの爆発物に絡む事件が起き始めた。04年6月には甲府市で、同年7月には愛媛県今治市で、それぞれ男が製造中に誤って爆発させ、死傷する事件があった。

 政府は04年末、過酸化水素などの化学物質の管理強化を関係省庁に指示。厚生労働省は05年3月、使用目的や購入量が不審な場合は販売を自粛し警察に通報するよう、薬剤師会などの関係団体に通達した。

 しかし、寺沢被告が過酸化水素水を買った薬局の経営者は「爆発物の原料になるなんて知らなかった」と話す。アセトンを売った静岡県内の業者は「ネット販売が主で、身元確認にも限界がある」という。

 一方、逮捕のきっかけは寺沢被告が薬品を注文した都内の薬局からの通報だった。地元の警察署では捜査員が薬局などを定期的に回り、不審な購入者についての情報提供を呼びかけていた。同店の薬剤師は「声かけがあったので、気にとめることができた」と話した。

http://www.asahi.com/national/update/0908/TKY200709080268.html