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2007年09月09日(日) 15時55分

殺意と責任能力争う 秋田連続児童殺害、12日に初公判朝日新聞

 秋田県藤里町の連続児童殺害事件で、殺人と死体遺棄の罪に問われた畠山鈴香被告(34)の初公判が12日、秋田地裁(藤井俊郎裁判長)で開かれる。被告・弁護側は、2軒隣に住んでいた米山豪憲君(当時7)の殺害を認めたうえで、長女の彩香さん(当時9)殺害に関しては殺意を否定する見通しだ。公判と並行して精神鑑定が実施されることが決まっており、刑事責任能力の有無も争われる。畠山被告の心の内の解明が裁判の大きな焦点になりそうだ。

 起訴状などによると、畠山被告は06年4月9日、彩香さんを同町の橋の欄干に乗せ、川に突き落として殺害。1カ月余り後の5月17日には豪憲君を自宅に呼び入れ、ひもで首を絞めて殺害したうえで川岸に遺体を捨てたとされる。

 初公判前に検察側、弁護側が地裁とともに非公開で重ねた「公判前整理手続き」では、主な争点を(1)殺意を持って彩香さんを川に突き落としたか(2)刑事責任能力はあったか——の2点に絞った。

 検察側は彩香さん殺害の動機について、畠山被告にはもともと「藤里町を出て東京に行きたい」と生活への不満を募らせる中で彩香さんを邪魔に思う気持ちがあり、魚を見に行った橋の上で彩香さんがぐずったことが殺害の直接のきっかけになったとみている。

 捜査段階で実施された簡易精神鑑定では、被告には自分が注目を浴びるために芝居がかった態度をとるなどの人格障害がある可能性が指摘された。検察側は、豪憲君の殺害については「誰でもいいから子どもがまたいなくなれば、悲劇の母を演じ続けて世間の注目を浴びられるうえ、彩香さんの殺害を第三者の犯行のように装える」と考え、偶然目の前を通りかかった豪憲君を殺害したとみている模様だ。

 一方の弁護側は、彩香さんの殺害については「被告は人に触れられるのを極度に嫌うところがあり、抱きついてきた彩香さんを反射的に払いのけた」として過失致死罪の適用を主張する方針。畠山被告が彩香さんを捜す行動に出たことについては「強いストレスがかかり、川に落ちたことを忘れてしまった」と説明するとみられる。

 地裁は「心神耗弱だった」と主張する弁護側の求めに応じ、精神鑑定の実施を決めている。

 公判は月3〜4回のペースで進み、年内に12回の審理が行われる。順調に進めば、来年1月には論告・弁論、来春には判決となる見通しだ。

http://www.asahi.com/national/update/0908/TKY200709080267.html