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2007年09月08日(土) 09時02分

政治資金報告書に団体側作成の「領収書写し」…選管容認も読売新聞

 政治資金規正法で収支報告書への添付を義務づけられた「領収書の写し」として、コピーではなく政治団体側で作り直した書面を提出し、選挙管理委員会も認めていたケースのあることが読売新聞の調べで分かった。

 領収書の二重使用などによる経費の架空計上が発覚しているが、これだと真偽を確認できない。違法ではないが、総務省は「コピーが望ましい」としており、識者からは「非常識」との声も出ている。

 同法は、政党や政治団体に、1件5万円以上の政治活動費の支出について、領収書の原本を保存し、写しを収支報告書に添付するよう定めている。

 二田孝治衆院議員が代表の自民党秋田県第1選挙区支部が、同県選管に提出した2003〜05年分収支報告書に添付された領収書の写しは、パソコンで作成したもの。A4判のスペースを9等分し、「領収書」9枚分にしたフォーマット(書式)に、金額や日付、支払先の会社名などを打ち込んでいた。支払先の印鑑はなく、「写」の文字が印刷されている。政策秘書は「この形式で出すのが慣例になっていた」と言う。

 県選管はそのまま受け付けてきたが、情報公開請求が相次ぐ中、8月末に総務省に問い合わせたところ、「原本の複写のほうが望ましい」と言われ、同支部に差し替えを求めた。支部側は、03〜05年分と近く公表される06年分で、領収書のコピーを提出するという。

 長野県でも、衆参両院議員の関連政治団体などが03〜04年分の収支報告書に領収書を書き写したものを添付していたが、「透明性の点から望ましくない」とする県選管の指導で、05年分からコピー添付に改めた。

 若林農相が代表の自民党長野県参院選挙区第1支部も04年分以前は、「領収書の写し」として、同支部で用意した紙に金額などを転記していた。会計責任者は「以前からこの方法をとっており、選管も問題ないと言っていた」と説明する。

 民主党副代表の北沢俊美参院議員(長野選挙区)の政治団体「北沢としみ後援会」「北沢とし美新政会」も、04年分まで自作の写しを添付。後援会の会計責任者は、「県選管も問題ないと言っていた」と話す。

 議員だけではなく、党県連でも似た例がある。

 自民党島根県連が03〜05年分の収支報告書に添付した「領収書」は、すべて同一の書式で、06年分も同じ。03〜05年分は計890枚、約2億8500万円あるが、「自民党島根県支部連合会殿」と印刷されたものに、日付や金額、支払先の団体名などを県連側で手書きで記入している。

 同県連では、領収書の原本は県連幹部に回す稟議(りんぎ)書の裏に張り付け、ひもでとじて保管しており、コピーをしにくいため、「30年以上前からの慣習」として転記していた。県選管は「法律では『写しを提出する』となっており、コピーでなくても受け取りを拒めない」としている。

 同党高知県連も、04年分の収支報告書までは県連側作成の手書き領収書。事務局の責任者だった男性(76)は、「原本は保存しており、ごまかす意図はなかった」と語る。

 総務省政治資金課は「違法ではないが、今の時代、コピーを取るほうが手間もかからないし、そのほうが望ましい」としている。

 岩井奉信・日大教授(政治学)の話「本来は、領収書の原本を出させるようにすべきで、コピーを認めるから経費の二重計上や五重計上が起きる。まして、領収書の写しを政治団体で作るのなら支出の明細を書くのと同じで、提出する意味がない。政治資金の常識が世間の常識といかにかけ離れているかを示す例だ」

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070908it02.htm?from=top