記事登録
2007年09月08日(土) 06時19分

「消えた年金」回復作業 申請3000件、認定29件朝日新聞

 「消えた年金」を回復するための総務省の「年金記録確認第三者委員会」の地方の認定作業が難航している。全都道府県にある50カ所の地方第三者委員会が、8月末までに受け付けた約3000件の申し立てのうち、「記録回復」のあっせん案をまとめた事例は29件しかないことが朝日新聞の取材でわかった。認定率は1%にも満たないことになる。こうした実情を受けて総務省は、作業の迅速化を図るため、事務局の体制強化に乗り出す。

 年金回復の審査を巡っては、総務省内に置かれる「年金記録確認中央第三者委員会」が7月以降、認定条件について「明らかに不合理ではなく、一応確からしいこと」とする「基本方針」を示すとともに、「記録回復」のあっせん案を自ら46件公表している。

 地方第三者委は中央委の先例をもとに議論し、記録を回復すべきかどうか合議で判断していく。先例に合致せず、地方で判断がつかない場合には、中央委に案件を上げる。地方委に対する申請は、7月17日から各地の社会保険事務所を窓口に受け付けが始まっている。

 9月2日までに社保事務所で受け付けた申し立ては9756件。社保事務所は必要書類をそろえた上で地方委に転送することになっているが、この転送作業も、8月末までに3048件、と3割程度にとどまっている。

 一方、記録回復の訴えを認めない却下の判断については、中央委がこれまでに3件出しているが、地方委では8月末の段階では出されていない。

 認定作業が進んでいない最大の理由は、保険料を納めていたと推測できるような「状況証拠探し」の難航だ。

 地方委事務局では、中央委が幅広く給付を認める方針を示したことを踏まえ、申請者が認定で有利になるよう、その人の勤務経験を証明できる雇用主の証言を集めるなどの協力をしている。だが、古い記録で探すのが難しいことも多い。

 もう一つの理由は、中央委の先例が積み重なるのを待っているという側面があるためだ。

 地方委は中央委の「基本方針」をもとに独自の判断も示せるが、「全国で判断が食い違わないように気を使う」(四国地方の担当者)というのが実情だ。

 安倍首相は先の参院選の際、「年金記録問題は私の内閣ですべて解決する」と宣言したが、今の「1カ月強で29件」というペースが続けば、10年以上かかるのは確実だ。

 中央委は「先例の類型が蓄積していけば判断のスピードは速まるはずだ」としている。

http://www.asahi.com/politics/update/0907/TKY200709070391.html