記事登録
2007年09月01日(土) 15時13分

部屋の借り主、遺棄への関与なし 東京・板橋の事件朝日新聞

 東京都板橋区のマンションから冨田威裕さん(29)の遺体が運び出され、群馬県内に遺棄された事件で、部屋の借り主の男は、死体遺棄容疑で逮捕された男らのグループに名義を利用されていたとみられることがわかった。借り主の男は当初、被害者との見方もあったが、グループの一人から「とにかく逃げていろ」と言われ、逃走していたという。3カ月の逃亡の末、別の容疑で逮捕されたが、遺棄事件には関与していなかったとみられる。警視庁は逮捕した計6人の関係や役割を調べている。

 男は大久保憲義容疑者(29)で、公正証書原本不実記載・同行使容疑で逮捕された。

 高島平署捜査本部の調べでは、事件は6月6日に発覚。板橋区高島平1丁目のマンション一室から、男3人が遺体が入ったとみられるカバンを運び出すのが目撃された。部屋の名義人の大久保容疑者が所在不明のため遺体は大久保容疑者ではないかとみられたが、翌7日、大久保容疑者から知人に携帯電話のメールが届き、生存していることがわかった。

 その後、「関東にいる。元気だ」などと知人に電話やメールを数回してきたが、本人の携帯の電源は切られており、行方はつかめなかった。

 8月30日、黒木樹容疑者(41)=死体遺棄容疑で逮捕=と一緒にいるところを発見され、偽の養子縁組をしたとして逮捕された。「黒木容疑者から3、4日部屋を貸してくれと言われた。遺棄事件はテレビで知った」と供述。ふだんから「兄貴分」と慕っていた黒木容疑者から指示されるまま、東京・高田馬場などの短期賃貸マンションや漫画喫茶に潜んでいたという。

 大久保容疑者は、少なくとも七つの実体のない会社の代表取締役になっていた。しかし、警視庁は、黒木容疑者らのグループが、振り込め詐欺などに使う銀行口座を開設するために会社を設立しようと、大久保容疑者の名義を利用した可能性があるとみている。

 マンションの部屋を契約する際、大久保容疑者と不動産業者を仲介した男がおり、偽名を使っていた。捜査本部は、この男は黒木容疑者で、大久保容疑者に契約させたとみている。この部屋のパソコンからは、黒木容疑者が代表になっている、実体のない会社に関するデータが見つかった。

 大久保容疑者は2度養子縁組し、姓を変えていた。消費者金融からの多額の借金から逃れるためだったとみられる。捜査本部は、黒木容疑者らが大久保容疑者のこうした事情につけ込み、報酬を約束して名義を利用していたとみている。

 グループは詐欺集団で、篠沢大介容疑者(36)がリーダーとみられる。会社への出資金を巡りトラブルになった篠沢容疑者が冨田さんの殺害を計画し、黒木容疑者らに遺体を遺棄させたと捜査本部はみている。グループのうち、大久保容疑者が面識があったのは黒木容疑者だけだったという。

http://www.asahi.com/national/update/0901/TKY200709010165.html