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2007年09月01日(土) 08時01分

宇和島徳洲会病院 診療報酬3000万不正請求 病腎移植医師ら処分も産経新聞

 愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で、架空の検査や投薬の「付け増し」などによる不正な診療報酬請求が行われていたことが31日、厚生労働省などの調べでわかった。約3000万円の不正請求が監査などで確認され、総額は1億円を超える可能性があるという。万波誠・泌尿器科部長(66)が実施してきた病腎移植も保険適用外の診療にあたり、同省などは診療報酬の返還を求めるほか、病院の保険医療機関の指定と、万波部長らの保険医登録を取り消す行政処分の検討を始めた。

 調べによると、同病院には10の診療科があり、平成16年4月の開業以来、泌尿器科のほか内科、外科など複数の診療科で、実際には行っていない検査や投薬を診療報酬明細書(レセプト)に「付け増し」して記載、診療報酬を不正に請求していた。

 「付け増し」はカルテとレセプトを対照する作業で判明。同省などによると、医師でしか行えない「付け増し」もあったが、診療報酬の請求は院内の事務サイドが行うため、不正請求が組織的に行われていた可能性もあるという。

 また、万波部長が同病院で実施した11例の病腎移植は省令で禁じられた「特殊療法」にあたり、保険適用の対象外となるが、全例で診療報酬を請求していた。

 さらに、万波部長は手術の際、患者に文書で説明することなどを同省が保険適用の条件として定めた通則も無視。昨年10月に同病院を舞台にした臓器売買事件が発覚するまで、腎移植手術だけでなく、腎臓や悪性腫瘍(しゅよう)の摘出手術などすべての手術で文書を作成していなかった。

 同省などは昨年10月以降、複数回にわたり同病院に対して監査を実施。万波部長が16年3月まで勤めていた同市立宇和島病院でも、同様の形で25例の病腎移植が行われていたことが明らかになっており、同病院に対しても診療報酬の返還請求を行う方針。

 宇和島徳洲会病院の貞島博通院長は不正の指摘があったことを認めたうえで、「悪意で行ったものはないが、ミスであったとしても指摘についてはすべて改善する」と話している。

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【用語解説】保険医療機関と保険医

 国民健康保険や組合健康保険など国民が加入している医療保険から、患者負担以外の診療費の支払い(診療報酬)を受けることができる医療機関と医師。厚生労働相による指定(医師は登録)を受け、治療や診療報酬請求の際には健康保険法や医師法、同省の定める規定などに従わなければならない。違反した場合、診療報酬の返還のほか、悪質性に応じて注意や戒告、指定(登録)の取り消しなどがある。取り消された場合、診療費は患者の全額負担となり、再指定(再登録)は最長で5年間認められない。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070901-00000049-san-soci