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2007年09月01日(土) 11時32分

<遠藤農相>組合長務める団体、補助金を不正受給 返還せず毎日新聞

 遠藤武彦農相が組合長を務める「置賜(おきたま)農業共済組合」(山形県米沢市)が99年、自然災害による農作物被害などを補償する公的保険制度「農業共済」の掛け金115万円を国から不正受給していたことが分かった。会計検査院が04年に指摘したにもかかわらず、不正受給分は今も返還されていない。農水省の補助金を不正に受け取ったままの団体のトップが、農相に就いたことになる。
 遠藤農相は1日午前、農水省で緊急会見し、事実関係は認めたうえで「3年前に不正受給の指摘を受けたが(返還などの)指示は受けていない。県や国からの指示に従う。組合長は辞任の手続きを取るが、(農相を)お受けした以上、全力をつくす」と語り、農相の辞任は否定した。
 農業共済は、組合員の農家と国が折半で集めた掛け金から、被害農家に共済金を支払う仕組み。山形県などによると、置賜農済はブドウの共済を巡り99年4月、申込書の偽造などで加入農家を水増しして国側に申請。これにより国が負担する掛け金(補助金)は本来より115万円多く置賜農済に支払われた。
 04年6月、会計検査院の検査で不正の可能性が指摘された。県は置賜農済に調査を指示し、不正が判明したが、県は水増し件数の確認や返納方法など具体的な対応を取っていなかった。検査院は今年5月にも未処理だと県に連絡。県は7月に調査に乗り出し、加入農家261戸のうち105戸は水増しと確認した。置賜農済は調査に「隣接する共済組合との合併を有利に運ぶため、加入農家を多くしたかった」と釈明したという。
 山形県経営安定対策課は「検査院から再度指摘を受け、対応を急いでいるところだ」と話している。
 遠藤農相は68歳。山形県議などを経て衆院山形2区選出で6期目。置賜農済の組合長は82年12月から約25年間務めており、報酬は年200万円。
 安倍内閣の農相は、政治とカネの問題で追及された松岡利勝氏が自殺し、後任の赤城徳彦元農相は事務所費問題で更迭された。遠藤農相も、代表を務める自民党支部が、農水省所管の独立行政法人から補助金を交付された「山形県家畜商業協同組合」から不適切な献金を受けていたことが判明し、8月30日に返金したうえで政治資金収支報告書を訂正したばかりだった。
 農業共済は農業災害補償法に基づき、災害時の減収分を補てんすることで農業経営の安定を図るのが目的。国は掛け金に加え、農家が組合員となって地域ごとに成立する農業共済組合の事務経費の一部も補助している。農水省の関係予算は07年度で約1125億円。【銭場裕司、佐藤薫】
 ◇「会見内容見て対応判断する」与謝野官房長官
 遠藤農相は1日、首相官邸で与謝野馨官房長官に事実関係を説明、与謝野長官は国民への説明など適切対処を指示した。その後、長官は記者団に「(会見の)説明を待ったうえで、きれいな説明ができたかどうかを判断したい」と述べ、遠藤氏の会見を踏まえて対応を判断する意向を示した。安倍晋三首相は改造内閣発足の際、閣僚の「政治とカネ」の問題について「十分な説明ができなければ去っていただく」と語っている。
 長官はまた、会計検査院による指摘を官邸が把握していなかったのかと問われ「今回の件は把握していなかったというのが正直なところだ。(事前に)把握できたかどうかは、なかなか難しかっただろうと考えている」と語った。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070901-00000028-mai-pol